■ シーク・ゲマレディンがアビシニアへ旅した際にコーヒーの効能を知る

 アデン(イエメンの首都)のイスラム教師、シーク・ゲマレディンが、1454年にアビシニア(エチオピア)に旅行した際、コーヒーの効能を詳しく知りました。アデンに帰国後、健康を害したゲマレディンは、アビシニアでのコーヒーのことを思い出し、効き目があるかもしれないと考えました。そこで、現地からコーヒーを取り寄せ飲んでみたところ、病気が治ったばかりか、眠気を追い払う効果があることにも気づきました。彼は早速、托鉢修道僧にコーヒーを飲むことを勧めたのです。
 アデンではこれ以前にもコーヒーの飲用は知られてはいたようですが、ゲマレディンのこの宣伝活動がコーヒー流行のきっかけになったのです。フランスの国立図書館蔵のアラビア語文献には次のような記述があります。「法律家や学生ばかりか、夜歩く旅人、芸術家など日中の暑さを避けて夜働く人々は、もっぱらコーヒーを飲むようになった」ということです。

 シーク・ゲマレディンは1470年ころ亡くなったアデンの律法学者。話自体はあまり面白みがなく、それがかえってこの話に真実味を与えています。ガランやコーヒーのバイブルといわれる『オール・アバウト・コーヒー』の著者ユーカースも、最もあてになるコーヒー飲用の始まりとしていますが、確実な資料が残されていないので、この話もコーヒー起源伝説の3つ目として語られることがあります。

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