寄り道

先日一年ぶりに、ロンドン在住のデビッドとミキさんが来店されました。カウンターに座りながらコーヒーの話などをする中で、「今度、東京へコーヒーのセミナー行くんです。」と話すと、急にスマホを取り出し、「東京へ行くなら、この店に行くといいよ!」と教えてもらったのがCOFFEE葵」です。コーヒーセミナー会場の最寄駅である青山1丁目から、新橋へ向かって3駅先の虎の門から歩いて行ける場所にあったので、セミナーの帰りに寄り道してみました。

 虎の門駅から虎の門ヒルズへ歩きながら、大規模ビルが立ち並ぶ一角を左に折れ、さらに右左とスマホ頼りに歩いていくと、そのハズレにひっそりと佇むウッディな外観に、“COFFEE”の看板が目に留まります。引き戸を開けて入ると、カウンターが目の前に見えるものの、照明の落とされたムードあるバーのようで、目が慣れないために突っ立っていると、「カウンターへどうぞ。」と二度も言われてしまいました。この時点で、「嫌な客が来たもんだ。」と思われたのかもしれません。

まるでお化け屋敷へ入ったかのような暗さでしたが、徐々に目が慣れてきます。目の前にはお化けどころか若い女性が立っており、この方が店主のようです。コーヒーとスウィーツのメニュ表を出され、深煎りのコロンビアとチョコレートケーキを注文し、暗さに慣れた目で見ると、正面左に小型焙煎機「ナナハン」が置かれ、正面右にはコーヒー豆の入ったガラスケースと陶器の器が数種類並んでいました。(美濃焼ではなさそうです)

ハリオのドリッパーに濾紙を置いて湯通した後、数回に渡って注湯する姿を見ながらカウンターの左を見ると、六角形が特徴のディープドリッパーらしきものがあります。照明の落とされた店内はカウンター4席とテーブル1席(2名)の小さなことがようやく分かりました。

陶器の器で出されたコーヒーとケーキを楽しんでいると、店主はバックヤードに入ってしまいました。一人だけ薄暗い店内でコーヒーと向き合って気付いたのが、先ほどまで都会の喧騒の中にいたことを忘れている自分がいることでした。なるほど、この店は心をリフレッシュさせてきれる場所なんだと思いながら、デビッドとミキさんがこの店を勧めてくれた意味が分かったような気がしたのです。 

帰路の途中に調べてみると、「COFFEE葵」は「やきまめ葵」という名前で、イベント出店やオーダーを受けて焙煎をするコーヒー豆販売を行われていたようで、20206月にこの場所にオープンしたようです。