ある輸出業者の破綻

定期的にニカラグアのコーヒー豆を購入されるお客様のため、再度購入されるタイミングを見計らって焙煎をしました。このコーヒー豆は、ニカラグア北部でアラビカ豆の栽培が盛んなヒノテガ県のものですが、今後、ニカラグアのコーヒー豆がこれまで通り入手できるのか、少々気になる情報が入っています。

それは、昨年の126日にメルコン・コーヒー・グループの破綻を報じられ、その傘下であるニカラグア最大手の輸出業者であるCISA社(CISA Exportadora)が閉鎖状態であるからです。メルコン・コーヒー・グループは、ニカラグア人のホセ・アントニオ・バルトダノ氏が率いる国際的なコーヒー関連企業で、本社をオランダに置き、ニカラグアのみならず、ブラジル、グアテマラ、ホンジュラス、パナマ、スペイン、米国、ベトナムに拠点を設け、世界60ヵ国に顧客を有しているとされています。

 ニカラグアのCISA社は、ニカラグアが輸出するコーヒー豆の約半分を担っているともいわれ、全生産者の約1割がコーヒー豆の集荷、加工そして輸出のプロセスをCISA社に委託しているとされています。また、資金繰りに問題を抱えているニカラグア国内の小規模生産者の経済的な支援を行うため、金融サービスである「メルカピタル」や、サステイナブルで生産性の高い農業を進めるための「リフト」というプロジェクトなども実施していました。そうしたものが、今回の破綻によって先行き不透明になってしまいます。

 破綻に至った原因として、パンデミック時の物流の中断、ブラジルの霜と干ばつ、持続的な価格変動、金利の上昇などの近年の問題が相まって会社の財政状況を悪化させ、オランダの銀行ラボバンクとの取引業務の与信枠を延長できなかったことがあげられています。

 ニカラグアでのコーヒー豆の収穫は12月が最盛期です。手摘みされたコーヒーチェリーは、農園に併設されたウエット・ミルで果肉を除去し、発酵させ水洗処理した後、CISA社のような大手が運営するドライ・ミルで乾燥や輸出準備の工程が行われます。CISA社が閉鎖された状態では、現金に替えられないコーヒー豆を安く買いたたく業者が現れ、コーヒー生産者は今後もコーヒー生産から他の農産物へ切り替えてしまうかもしれません。一時的には安いコーヒー豆が入手できるかもしれませんが、中長期的な影響が必ずあると想像されます。 

 そんなことを思いながら、お客様へ準備したコーヒー豆のパッケージを見ておりました。