話につられて山岡へ

日曜日に来店されたお客様が、「恵那市から多治見市へ帰る途中に寄ったんだけど、向こうは雪が降っていた。」という話から、実家近くの山岡町の話題になり、冬場に行われる寒天作りについて話が及びました。「子供の頃は、天草(テングサ)を匂いが嫌いでしかたなかった。」、「町にある田んぼが、全て白い細寒天で埋め尽くされた。」といった話を聞きました。そこで、急遽、山岡町へ車を走らせたのでありました。

ところが、山岡町へ入って寒天作りが行われているはずの場所に、白い干し棚が見当たりません。「まだ早かったか?」と思いながらさらに進むと、下手向簡易郵便局の川を挟んだ田んぼには山一寒天産業の干し棚が並べられ、天草の煮汁を冷やして固めた「ところてん」を細い麺状にして天日干しにされています。

山岡町の昼暖かく、夜が寒いという気候を利用し、夜の寒さでところ天が凍り、昼の暖かさで水分が溶けて落ちる。その凍結と解凍を繰り返しながら乾燥させる作業は2月まで続きます。寒天の名の由来はこの「寒ざらしのところ天」から来ているそうです。

 お客様が「町にある田んぼが、全て白い細寒天で埋め尽くされた。」と言われていましたが、そんな光景は今では見ることが出来ません。それもそのはず、1961年(昭和36年)には工業設備も導入されるようになり、生産工場が120を超え最盛期を迎ましたが、需要の低迷で現在は岐阜県寒天水産工業組合のホームページを見ると、細寒天の生産者は7社しかないようです。それでも、ここから生み出される細寒天は、非常に質の良いことで知られ、全国シェア80%を超える特産品となっています。

 ちなみに、「山岡細寒天」という商標は、「地域名と商品・サービス名」が結びついた商品の商標権の登録要件を緩和し、地域の活性化などに役立てようという新しい制度が200641日の商標法改正によりスタートした、その第一号となった全国52件のうちの一つでもあります。 

 お客様との何気ない会話から、山岡町へ出かけた定休日でした。