世界を旅するコーヒー事典

 週末に予約していた、『世界を旅する コーヒー事典』(著:川島良彰)が届いたので、定休日の月曜日に店で作業しながら読みました。副題に「旅するように学ぶ、世界のコーヒーの基礎知識」とあるように、本文の8割が世界のコーヒー産地を紹介しています。アフリカ・中東編、アジア・太平洋・北米編、中米・カリブ海編、南米編と、なんと36の国や地域を網羅し、大変楽しく読むことが出来ました。

 とはいえ、「基礎知識」とはいうものの、川島さんのこれまでの活動内容を少しは知っている私には、「あの時は、そうだったのか。」、「あれから、そんなことになっているのか。」という楽しみ方ができるのですが、予備知識のない人には果たしてどれくらい「旅するように学ぶ」ことができるのでしょうか?

 ましてや、コーヒー産地が植民地時代を経験し、冷戦時代の代理戦争となった内戦や民族間の争いなど、本書をきっかけに一歩踏み込んで学ぶことのできるエッセンスが多数盛り込まれてはいても、いったいどれだけの人が知ろうとするのか気になってしまいます。

 世の中が、「スペシャリティーだけがいいコーヒーだと思う人」や、「貧しい人から買ってあげよう」といった誤った感覚を持ったままでは、「コーヒーの品質に関心を持つ」物差しも本来とは異なってしまいます。

 そのためには、消費者が賢くなければいけないと同時に、コーヒーの販売に関わる人々が正しい基礎知識を持つべきであり、そのために「コーヒーの基礎知識」という副題なのかなとも思ってしまいました。そのうえで、消費者は生産者の現状を知り、生産者は消費者国の市場を知り「互いを理解する」とのになるんでしょうね。