ガレリア織部へ

多治見駅裏にある「ガレリア織部」で行われている、『中山尚子展 九月の庭』(92日~914日)を妻と一緒に見に行ってきました。中山尚子さんといえば、まめ蔵の店内に飾ってある絵を描いた方です。ここ何年間は宮沢賢治や新美南吉といった作家の童話を題材にした絵を見てみましたが、他にも音楽や海外の童話をモチーフにした作品が多くありました。

 案内状に描かれた作品は、新美南吉の「デンデンムシ ノ カナシミ」を題材にされた作品で、7月に瑞浪市地域交流センターで行われたアートキューブ展覧会にも出品されています。童話の内容はちょっと後ろ向きな感じがして好きではないものの、悲しみを抱えたデンデンムシが水面に人の姿となって投影され、なんだか癒されてしまいます。

 同じ新美南吉の作品でも、「うた時計」は村の少年が「清廉潔白の廉だよ。」と自分の名前を言い、「清廉潔白というのは、なんにも悪いことをしないので、神様の前へ出ても、巡査につかまっても、平気だということだよ」と言われたことで、時計屋のドラ息子が実家から盗んできた時計を返すといった、ちょっと微笑ましいのが好きです。

 案内状には次の文面も添えられていました。『園芸業を営む主人との暮らしの中で植物は常に近くにありました。園芸のお仕事を手伝いながら43年間、絵の仕事も続けてきました。最近は庭作りに力が入り季節のうつろいが絵の中にも入り込んでいます。ガレリア織部での展示空間に合わせ沢山の新作を制作しました。ご覧いただけましたら幸いです。』とあります。多くの作品に、園芸と同じく地面に近い目線で描かれた作品が多かった印象です。 

 タイトルの「九月の庭」には、そうした園芸業からくる言葉なのでしょうが、私には、9月は夏から秋への季節の変わり目と同時に、秋雨と呼ばれる多雨な季節であり、台風も多く上陸する季節を想像させます。背の高い植物は支柱を立てたり軒下に取り込む準備をし、涼しくなってくることから、植物が元気を取り戻せるよう追肥をする時期を考えると、人間も何かしら体力をつけたり知識を増やし、今後に備える季節だと感じました。