ぶらり自家焙煎店(八百津)

レジカウンターの下に入れ、「いつでも読めるわ。」と思いながら置いたままになっていた『ハヤブサ消防団』(著:池井戸 潤)でしたが、先週になって一気に読み終えました。東濃弁やローカル色の強い食べ物、イベント行事や地名(微妙に変えてある)といった内容に馴染みがあり、心地よく読み進めることができました。

そんな「ハヤブサ消防団」の舞台となっている八百万町ならぬ八百津町に愛着を抱き、再び訪問してみようと、母親と一緒に掛かり付け医に行った後、八百津町へ車を走らせました。もっとも、小説やテレビドラマ(見てない)に関連する場所には興味は無く、向かった先は、八百津町内にある自家焙煎の店なのです。事前に調べてみると、数件の自家焙煎店があるようなのです。

 最初に向かったのは、創業57年という『喫茶 五宝』(八百津3769-6)さんです。コーヒー好きだったご主人がサラリーマンを10年程やったあとに、夢だった自家焙煎の喫茶店を始められたとのこと。ご夫婦で営まれていたようですが、ご主人が亡くなり、今では奥様一人で切り盛りされているそうです。ただ、奥様も4年前に病に倒れられたこともあり、そろそろ店を閉めようか検討中だといいます。ご主人が亡くなられてからは焙煎を息子さんが行っているものの、サラリーマンを辞めてまで続けるほど儲からないので、しかだがないと話されました。

 しばらくすると、「残された期間を精一杯やるだけです。」、そう言いながら、注文した「コーヒー三昧」をテーブルに置いてもらいます。これは、デミタスカップに注がれた焙煎度の異なるブレンド、マイルド、ミディアム、ソフトの三種類を楽しめるコーヒーです。私がそのコーヒー飲んでいる間にも数人のお客様が来店され、「美味しいわ。」といってコーヒーを飲まれている姿を見ながら、50年以上に渡って町の方々へコーヒーを提供されてきた店も無くなる日が来るんだと、感慨深くなった次第です。

 次に、「喫茶 五宝」から1kg程離れた場所の「みの食製菓」(八百津8347)さんの直売所横にある『喫茶こよみ』さんへ向かいました。インスタグラムで「八百津の隠れた珈琲屋さん」とあるように、住所は非公開で探さないとたどり着けないお店です。主にオーガニックとフェアトレードの豆を扱っているとのことでしたが、残念ながらこの日は店休日でした。

 八百津町には「ハヤブサ消防団」のハヤブサ地区のモデルと思われる、久田見という標高の高い場所があるのですが、そこにも自家焙煎の店が検索に出てきました。ところが、どうやら4年ほど前に閉店されたもようです。サイフォンでコーヒーを淹れる店だったそうですが、なにせ何もない場所ですから。ちなみに、その近くには「ハヤブサ消防団」の居酒屋で登場した「アブラゲ」を作っているのが、久田見あげの「丸登豆腐店」があります。 

 小説やドラマで一時的に話題になってはいるものの、ご多分に漏れず過疎化の進む町です。そんな町にも、美味しいコーヒーが飲める場所が残り続けることを願いながら、八百津町を後にしました。