外来種の白ユリ

土岐市は周囲を山で囲まれた盆地のため、多治見市との境は神明峠、御嵩町との境は月次峠、瑞浪市との境は堀越峠といったように、峠道が各所にあります。そんな市街地を離れて山道を車で走らせていると、いつの頃か、夏場に白いユリの花を見かけることが多くなりました。随分前から気付いてはいたものの、「また、外来種の花でも咲いているんだろうな。」といった程度で特に関心も無く、車窓の一景色として通り過ぎていたものです。

 ところが最近、あるお客様と出会ってから気になりはじめ、今回、車を停めて道路脇に咲いている白いユリの花をじっくり見てみたのです。スマホアプリのGoogle レンズで検索してみると、「タカサゴユリ」という台湾原産のユリが検索結果にでてきました。日本に咲く白いユリの「テッポウユリ」とよく似ていますが、開花時期が「テッポウユリ」は5~6月で、「タカサゴユリ」は7~8月の盛夏に咲くようです。

鼻を近づけてもユリ特有の香りはなく、花の外側に赤いラインが入り、茎には細い葉を密につけています。そのため「ホソバテッポウユリ」と呼ばれることもあるそうです。この「タカサゴユリ」は1924年に庭植え用や切り花用として日本に持ち込まれましたが、今では西日本を中心に野生化しており、その強い繁殖力で、近年では、関東や東北の一部でもみかけるようになっているといいます。

 なぜ外来種の花に興味が湧いたのかというと、先月、まめ蔵に来店されたお客様が外来種のアリを研究している方だったからです。その際、ご夫婦で来店されたのですが、奥様は普段一人で来店され、コーヒーとケーキを楽しんだ後にコーヒー豆を購入されていました。けれど、今回は初めてご夫婦で来店されたものの、それぞれ別の車でお越しになったのです。不思議に思って声を掛けると、先ほどのように外来種のアリを筑波学園都市で研究されており、「ここへ来るまでに既にアリを捕獲してきました。これから美濃加茂市でもアリを捕獲しようと思っています。」とのこと、まめ蔵はご夫婦の合流地点だったのでした。

 外来種のアリといえばヒアリが話題になりましたが、その他にもアルゼンチンアリ、アカカミアリなど多くの外来種がいるようです。そんなアリを採取するというご主人を見て、「まるで朝ドラの植物学者・槙野万太郎みたいですね。」というと、奥さんが「そうなんです。それの昆虫版です。」と笑顔で答えてくれました。ご主人の風貌もどことなく槙野万太郎を演じる神木隆之介に似ているので、とても印象に残っています。

 そんな訳で外来種の白いユリに興味を持ったのですが、その外来種によって日本の原種ユリはどれも減少傾向にあるといいます。自生地が減ってきている理由は、環境破壊が進んだためや、ユリ根を食用として乱獲したため、さらには、日本の原種ユリがどれも連作を嫌いウイルス病に弱いためだといいます。一方で外来種の「タカサゴユリ」はとても生命力の強いユリのため、日本の原種ユリの自生地を奪ってしまったり、自然交雑が進んだ結果、原種ユリが消失してしまう恐れがあることが分りました。

国立環境研究所の侵入生物データベースを見ると、「繁殖力が旺盛なことから、生態ニッチェが重なる在来種との競合が懸念される。また近縁な在来種と交雑するリスクも想定される。キュウリモザイクウイルス(CMV-Li)、チューリップモザイクウイルス(TBV-L)およびLily virus Xなどの植物病害ウイルスの宿主であることが報告されており、これらのウイルスを在来植物種に媒介するリスクが想定される。」といった影響が懸念されていました。 

普段、何げなく眺めている白いユリでしたが、やっかいな存在であることを知る機会を得ることが出来ました。そんなお客様に感謝!感謝!出会いは楽しい!