ミャンマーからのお客様

地方の小さな珈琲屋にも、時々、海外の方が来店されることがあります。以前、市内に住むブラジル人の方が一度来店されましたが、どうもコーヒーの味が合わなかったようで再び店のドアを開けられることはありませんでした。また、外国人労働者の派遣会社と思われる方が、面接の場所として度々利用されています。その場合、主にブラジル人やフィリピン人の方々で、コーヒーの味はどうでもよいといった感じです。ちょっと残念なのですが。

 そんな店に、若い海外の女性三人組が来店されました。どうもアジア系のようですが、どこの国か分かりません。ただ、その内に一人は、以前、年配の女性と来店され、「この若いのに、日本語が達者で頑張って働いているんだと。」と話されたことを思い出します。日本人と同じように、スマホを片手に笑顔で会話をされている様子を横目で見ながら、会計の際に声を掛けてみると、隣町の病院で介護の技能実習生として働いていることを知ります。そして、ミャンマーから今年の2月に来日したということです。

外国人技能実習制度に介護分野が加えられたのは201711月で、厚生労働省が「2025 年には介護人材は 377 千人不足する」という危機感から決められたと思います。また、技能実習生として来日されるのが主に東南アジアの方々で、ベトナムが多い印象があります。

実際に、厚生労働省が発表した令和4年10月末現在の外国人雇用についての届出状況を見ると、外国人労働者数は 1,822,725 人で、前年比 95,504 人増加し、届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新しており、国籍別では、ベトナムが最も多く 462,384 人(外国人労働者数全体の25.4%)。次いで中国 385,848 人(同21.2%)、フィリピン 206,050 人(同11.3%)の順でした。

そうした実態の中で、ミャンマーからの技能実習生は珍しいと思ったら、どうやら最近では、対前年増加率が高い主な3か国 として、インドネシア 77,889 人(前年比 47.5%増)、ミャンマー 47,498 人(同 37.7%増)、ネパール 118,196 人(同 20.3%増)と、意外にもミャンマーから働きに来る方が多いことを知ります。

ミャンマーといえば、20212月に軍によるクーデターが起こり、今なお政情不安な状態が続いている国です。そして、当然ながら医療水準は低い状況ですから、数少ない看護師を外国に送り出すことを認めていません。にもかかわらず、日本への技能実習生として働く人が増えているのには政情不安だからこその理由があるようです。

日本で介護の職に就くには、現地で看護師として働いた経験者が望ましいのですが、看護師資格はないものの、ミャンマーでは四年制大学を卒業した人へ日本で働くことを勧誘しているようです。大卒は修学能力も高い人達ですが、同時に、大卒や在学生、中退者らが軍政に対して不満や不安を募らせており、国を出たいと思っている人も多いそうです。そんな中、日本で働くといことが魅力的に映るのでしょう。

とはいえ、日本で介護に関する技術を習得し、母国に帰ってから指導者として技術を生かしてもらうといった考え方は、高齢化が進んでおらず、家族による介護が一般的な国では成立せず、技能実習生として人手不足を解消したいという身勝手な日本の制度だと思えてなりません。

技能実習制度は30年間続いてきており、日本の中小企業にとって不可欠な人材確保の手段になってしまいました。地元の陶磁器業界を見ても分かるとおり、技能実習生の給与は低い状態ですし、数年間しか働かないので賃金を上げることもありません。むしろ、日本人にかわる残業要員にしているところもあります。本来はイノベーションを起こし、高付加価値化、高賃金をめざすべきですが、技能実習制度により低賃金で労働者を確保できることから、その努力を怠ってきたのです。

政府の有識者会議は今年に入り、外国人が働きながら技術を学ぶ技能実習制度を廃止すべきだとした上で、人材確保などを目的に中長期的な滞在を円滑にし、働く企業の変更も一定程度認めるよう緩和する新たな制度への移行を求めるたたき台を示したといいます。しかし、個人的には「技能実習」という名の元に労働者の確保をしているだけであり、何ら変わらないように思えてきます。 

ミャンマーからのお客様を見て、技能実習生について少しだけ考えてみました。