金枠ロンドンへ行く!?

昨年の夏、まめ蔵に見慣れぬお客様が来店されました。マスクをされているのではっきり分からなかったものの、外国人の男性と日本人の女性と思われるカップルです。接客時にお話しすると、下石町出身の奥様とイギリス出身の旦那さまで、ロンドンに在住ということでした。その頃、ロシアのウクライナ侵攻のために物価上昇が続くヨーロッパが話題になっていたため、光熱費について質問した覚えがあります。

 それから半年後、再び来店されたのが2月上旬です。いつものようにコーヒーを運んで、次のお客様のコーヒーを淹れていると、旦那さまが抽出する様子をじっと見ておられます。そして、テーブルに向かった際に、「お湯を足しているようですが?」と質問されました。そこで、いつものごとくカウンターへ誘って松屋式の説明を始めたのでした。

 先ずは、松屋式の金枠と一般のドリッパーと異なる点、コーヒー豆を粗挽きにして粉の量を多く使用すること、抽出したコーヒー液が最初と最後とでは別物であることなどを説明します。最後に、濃くて美味しい成分の含まれた部分を希釈し、お二人に提供し試飲してもらいます。毎回の事ですが、飲んで「美味しい!」という反応を楽しんでいる私ですが、この時は普段より反応が良かったこともあって、二人用の金枠をプレゼントします。すると、ブレンドの豆を購入いただき、実家で淹れてみるという話でした。

 それから一週間後にも豆を購入され、今日も二人でコーヒーを飲みに来店されました。ちょうどカウンターしか空いていなかったため、カウンター越しに抽出する姿を見られながら会話を始めると、来週の火曜日には帰国するとのことです。「帰国しても松屋式で抽出しますか?」との質問に、「はい、チャレンジしてみます。」とのこと。嬉しくなるではありませんか。

 ただ、危惧するのは抽出に使用する水のことです。日本のほとんどは軟水ですが、イギリスを含めヨーロッパの多くが硬水のため、酸味が消えてしまう傾向にあります。ご夫婦もその点が気になるようで、自宅でコーヒーを淹れる際には、知り合いの店で軟水に加工された水を分けてもらっているそうです。市販の水は硬水がほとんどで、ごくわずかに軟水もあるものの大変高価だといます。 

 そんな環境ですが、ロンドンでの生活に松屋式の金枠で淹れたコーヒーを飲んでもらえそうです。デビッドとミキさんが再び日本に帰ってきて、また、まめ蔵へ来店された際には感想を聞いてみたいと思います。それにしても、デビッドさんの低音の声はFMラジオに登場するパーソナリティーのようで魅力的でした。英語はさっぱり分からんけど。