うさぎ岩へ

 『今のお月様にゃあ餅つきうさぎは2匹しかおらんけどの~、大昔にはの~、月の神様にお仕えするど~ら~ぎょうさんのうさぎがおったそうな。月の神様はど~ら~きれい好きでの~、ほんだもんで地球から見えるお月様はきれいなんよ。しかもお恵み深ぁ神様での~、お月様の国で餅をついちゃあ他の星の神様にも分けてあげとったそうな。

お月様の国をきれいにしたり、餅をついたりすんのはうさぎんたぁの仕事なんだけんど、神様に背いて掃除も餅つきもやらへんうさぎんたあもおっての~、お月様の神様はそういう怠けうさぎんたぁを次から次へと俺らの地球に下ろ~てしまや~たそうや。最後まで残ったウサギは3匹で、2匹のうさぎで餅をつき、もう1匹は手返しをしよ~たげな。

お月様では、いっつもかも餅をついとるんやけど、どんだけついても足らへん。だって、ど~ら~数の星の神様たぁに分けてあげるんやから。そのうち、手返しウサギは先に地球に下ろされたうさぎんたぁと同じように、だだをこねて時々手返しを怠けるようになってしまったそうや。月の神様は、手返しウサギに餅つきの大切さを話ししたんやけんど、そのうち全くやらへんくなってしまった。だもんで、他のウサギんたぁと同じように、ついに地球に追いやってしまわれたんや。そんやから、残った2匹だけで餅をつくようになったんよ。

先にお月様の国を追われたウサギんたぁは、昼は寝て、お月様が出るがさあと、お月様に向って急に踊り出して月を懐かしむのや。そのうち、ウサギんたぁは野ウサギとなり山うさぎとなっちゃって、夜しか行動ができへん体になっちゃったそうや。最後に下ろされた手返しウサギも、他のウサギと同様に月を懐かしみ、お月様のもとへ帰りたくなり、近くの一番高い山に登って月の神様にお願いしようと山に登りかけたんやけんど、昼間はキツネや犬にぼいかけられてなかなか登れやせん。やっと8合目まで登った時、太陽が出てきて昼間となり、ついに動けんなくなって岩となってしまったのや。これが現在のウサギ岩や。』

 こんな話が、瑞浪市陶町の公民館で発行する「もっと知ろう 方言昔話(5)うさぎ岩」の中に登場します。そこで、来年の干支である、うさぎに見える大岩「うさぎ岩」を実際に見るため、陶町大川の八王子神社の駐車場に車を止めて、「うさぎ岩登山道入り口」を徒歩で進むことにしました。

八王子神社のある場所は、世界一の狛犬や世界一の茶壷近くにあり、うさぎ岩への登山道は陶町の街づくりの方たちによって整備されているのですが、普段から運動していない私にとっては大変キツイ運動となりました。事前調べでは約 20 分で登ることができるとあったのですが、実際には30分程かかってしまい、途中で登るのを諦めたくなるくらいでした。

登山道の傍らには何度か「うさぎ岩」を示す看板があるものの、残り○○mといった表示があると、頑張れるのになどとボヤキながら登って行くと、雑木林の先にうさぎ岩のビュースポット(展望台)に到着します。そこには70代と思われる男性が先に到着しており、「年賀状の写真に使いたいと思って。」といって、うさぎ岩の写真を撮っておられました。振り向くと、陶町の町並みが小さく見え、ここが標高525メートルの丘にあることを実感しました。 

うさぎ岩は、高さは約6メートルで、周囲は約30メートル。大きな岩の上に、亀裂が入った別の岩が載っており、角度次第で、ウサギの胴体・頭・耳に見えることから、先ほどのような昔話が生まれたのでしょう。諦めずに登り切った私は石にならず、人間として12分程で下山したしだいです。疲れた。