SCAJ2022へ(2)

SCAJ2022へ行く目的の一つに、コーヒー産地に関わる詳しい情報を知ることのできる、各種のセミナー受講もあります。今回は、事前に3つのセミナーを申し込んでおきました。

■「ミャンマーコーヒー今と未来」

 主にシャン州のコーヒー農園の豆を扱う「ジーニアスコーヒー」による、ミャンマーでのコーヒー栽培の説明です。ミャンマーでは9つの産地でコーヒー栽培が行われており、その多くが小農家です。農家では女性就労者が90%以上を占め、コーヒー以外の作物を植える森林農法となっています。少ない耕作面積のため、付加価値を付けるために品質の良いものを作ることで収益を上げようと、赤いチェリーを摘むための教育や、コーヒーの実の外皮や果肉を使ったカスカラからシロップや、コーヒーの花茶(受粉後の花を使用)を作っています。

■「イエメンが世界のコーヒー生産を遺伝子レベルから作りかえることができる理由」

 ちょっと前から話題になっている「Qima Coffee(キマ・コーヒー)」からの話です。イギリス育ちでエネルギー分野を研究していた創始者が、故郷のイエメンでの戦争によってコーヒー業界へ転身し、この分野で革命を起こすストーリーになっています。

何せ、コーヒー豆のDNA解析し、それまで根拠なく〇〇〇の苗といって植えていたコーヒーノキが、いきなり全く別物だって分かるんだから、農家や関連業者にとっては脅威です。巷で人気のゲイシャとして売られているサンプルを世界から取り寄せ分析してみると、60%以上がゲイシャ種ではなかったのだから、そりゃ煙たがられる筈です。

しかし、取り組んでいることは真っ当なことばかりで、契約農家も2016年には30農家だったものが、2020年には2600農家となり、イエメンにおける先進的な活動が評価されています。ただ、「イエメンはコーヒー発祥の地」と言いたがりで、しきりに通訳者が「エチオピアはコーヒーが見つかった場所で、イエメンはコーヒーを農業として栽培した世界最初の地」と補足していたのが笑えます。それに、新品種となったイエメニアに対する気候変動への耐性、病害虫への耐性にも一部言及してしまうところも気になりました。

■「ミャンマーコーヒーテイスティングセッション」

 こちらは、ミャンマーコーヒー協会による説明とカッピングです。ミャンマーでは85%以上が2エーカー以下の小農家であり、そのほとんどが輸出産品として作られています。もともと中国と隣接することからお茶文化の伝統があり、コーヒーを飲む習慣がありません。最近では若者を中心のインスタントコーヒーやベトナム式のコーヒーが飲まれているようです。

 今回は、ミャンマーコーヒー協会に所属するエリアの中から、10種類のコーヒーを試飲しましたが、その多くがナチュラル精製です。品種はカティモール、SL34、カツアイが中心で、中にはゲイシャも登場しましたが、ゲイシャ・フレーバーは微妙でした。全体的に標高の高いエリアのコーヒーほ華やかな香りが感じられたものの、事前にリスト表を作成して配布されれば落ち着いて試飲できるのですが。 

 どんな人がコーヒーを生産しているのか?そこが、どのような場所で、どのような環境なのか?ネットでは知ることのできない情報もあったものの、ミャンマーでの軍事クーデターについては、一言も触れられない違和感を感じながらも、現実では、こんな感じになるんだとも思いました。(他人事じゃない)