主役は誰?

東京ビッグサイトでミャンマーのコーヒー10種を試飲した後、展示会場に向かうとイベント会場Aのコーナーでは、「ジャパン・ハンドドリップ・チャンピオンシップ」の決勝が行われておりました。そこを横目に会場を立ち去り向かった先は、品川プリンスホテルで行われる、「第2回チャレンジ・コーヒー・バリスタ」の会場です。

コーヒーを通して、障がいの有無に関わらず、すべての人がその人らしく活き活きと、命を輝かせて生活できる「インクルーシブな社会」となることを願って企画された、「チャレンジ・コーヒー・バリスタ」は今回が2回目で、前回は無観客のためYtubeによるオンライン中継を見ました。

障がいを持った人達が、コーヒーで生きがいのある仕事に付けるようになること、企業のオフィス・コーヒーを全自動コーヒーマシンの変わりに障がい者が淹れる。街のコーヒーショップで、自信を持って生き生きと彼らが働く。こんな光景が当たり前になる社会を目指して始まったイベントですが、「インクルーシブな社会」に対して疑心暗鬼な気持ちを持っている私は、実際にイベントを見ることで理解しようと訪れたのです。

大会は第1部のブレンド審査と第2部の抽出技術審査に分かれており、ブレンド審査では、各チームが大会主催者から事前に提供された焙煎豆を使用したオリジナルブレンドを作成、それを会場の観覧者が試飲して審査・投票します。(抽出は主催者用意のコーヒーマシンを使用)ちなみに、焙煎豆は・ドイトゥン・コーヒー(タイ チェンライ県)、・フェダール・コーヒー(コロンビア カウカ県)、・サン・ミゲルコーヒー(グアテマラ アンティグア)です。

 小さな投票用紙にメモ書しながら試飲しますが、11チームとあって似通ったコーヒーもある中、個人的に甘さを強く感じたコーヒーに投票しました。試飲している出場者チームの一人に、「自分たちのコーヒーだって分かるものありました?」と尋ねると、「う~ん。たぶんこれだろうと思うのはありますが難しいですね。」と答えてくれます。後からブレンドの配合を知ることになりますが、やはりコロンビアをメインにするところが多く、正直、どれが好きかってことになります。

 第1部でのブレンド審査を終え、第2部の抽出技術審査となる別会場へ向かいます。ここでは、各チームが作ったオリジナルブレンドを主催者が用意した水や抽出器具で抽出し、接客・プレゼンテーションを行います。・・・。

 ・・・。となったのは、5チームの抽出技術審査を終えた頃からしんどくなったので、早めに帰路に向かいました。そうなったのには色々ありまして、ちょっとだけ箇条書きにしておきます。

・一般観覧者を入れたことや参加チームを増やしたことなどで、運営側が対応しきれていないため、無駄な移動や時間的なロスが多すぎる。昨年はYtubeの録画時間が2時間32分に対し、今年は1部と2部合わせて5時間50分を超えることからも明らか。

・MCの女性を二人にしたため、左右に観覧者の目が移ってしまい、出場者への注目度が薄れる。

・昨年もスポンサー紹介が会場内で行われていたが、別撮りの動画流せば会場内の混み合いも減らせる。(JALさん喋り過ぎです。)

・明らかに少ない試飲用のカップとコーヒー。複数の出場者がブレンド審査会場にやってきた際、カップとコーヒーが無い状態が続き、結局、審査時間が終了して出場者自身が試飲する機会を失った。

・抽出技術審査会場に椅子席が設けられていないため、会場内で名刺交換や挨拶が交わされ、審査会場とは思えない雑音が聞こえて競技内容に集中できない。

・左右に競技用テーブルが用意されているにも関わらず、なぜかコーヒーミルが1台しかなく、スタッフが抽出の終わるたびに持ち運んでいる姿が見苦しい。

・全体の進行を担うと思われる人物の動きが目立ち過ぎる。マイクやイヤホンで済むだろうに。

 果たして、ここは競技会場なのだろうか?スポンサーや参加企業のためのPR会場なのか?いったい出場者のどこにスポットを当てようとしているのか?自己紹介すらもMCが行い、ひたすら寡黙に抽出する出場者チームの姿を見ていると、障がいを持った人達にとって、コーヒーを淹れることが生きがいの持てる仕事の一つになるのか?疑問だらけだった。 

 素晴らしい志を持つことと、それを具体的に形にすることは、多くの思惑が交差して絡み合い、進むべき道筋を見失ってしまうのかもしれません。結局、途中退場したこともあり、「インクルーシブな社会」の姿のヒントも見つからないままです。そんな中にあって、賑やかな会場の中、主催者側の日本サスティナブル協会理事である池本幸生さん(東京大学東洋文化研究所)が、ずっと静かに何かを見守っているかのように立っている姿が印象的でした。

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コメント: 4
  • #1

    池本幸生 (日曜日, 16 10月 2022 10:39)

    「第2回チャレンジ・コーヒー・バリスタ」にご来場いただき、ありがとうございました。
    第1回のときはコロナの真っ最中で無観客だったので、予定よりも早めに進んだのですが、今回は多くの方にご来場いただいたので、進行に不手際が生じました。ご指摘の通りです。たいへんご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。
    その他のご指摘の点についても同じように感じていました。来年の大会では改善しておきますので、来年もぜひご参加ください。
    「インクルーシブな社会」を実現することはそう簡単なことではないと思いますが、少しずつでも変わっていくように努力したいと思っています。大会出場が決まってからの半年間、出場者の方と周りで支援する方が一緒になって勉強しトレーニングしている様子を見ていると、とてもいい機会になっているように感じました。そういうところも見ていただければ良かったですね。
    次回、どこかでお会いする機会があれば、ぜひ声をおかけください。

  • #2

    まめ蔵 (日曜日, 16 10月 2022 12:49)

    池本先生自らコメントいただきありがとうございました。ブログの最後に池本先生のことを付け加えたのは、冷静にイベントを俯瞰している人がいると確信したからです。川島さんが言われたように、世界的なイベントになることを期待していますが、そのためには、もっともっと、参加者へ光を当て、その存在を多くの人に知ってもらうことが必要です。主役は彼らであって、かれらの競技会なのですから。そして、彼らをもっと鍛えなければならないとも思います。また、このイベントはその過程を見せる場所であるべきだとも思います。次回も可能ならば観覧(応援)しに行きたいと思っています。

  • #3

    池本幸生 (月曜日, 17 10月 2022 09:08)

    コメント、ありがとうございます。ご指摘の通り、障がい者の方たちにやっていただきたいことはたくさんあるのですが、いきなり多くのことをやっていただくのはハードルが高すぎるので、徐々にいろいろなことを学んで行ってもらおうと考えています。来年はもう少し進んでいるところをお見せできると思います。

  • #4

    まめ蔵 (月曜日, 17 10月 2022 09:52)

    次回を楽しみにしています。
    正直、歯痒い気持ちで見ていました。私自身、これまで何人かの障がい者と関わりを持ってき思うのは、周りが彼等のハードルを決めるのではなく、自分達で決めてもらい失敗をしながら経験を積むことが必要だと感じています。
    勝手なことばかり言ってすいません。