且座喫茶

恵那市山岡町には「爪切地蔵尊」があり、一般的なお地蔵さんの形ではなく、岩の表面に地蔵尊が刻まれたものです。この地に訪れた弘法大師が、一夜の内に自身の爪で刻んだという言い伝えが残っており、毎年816日を大祭として、約300年の伝統がある煙火(花火)が奉納されています。

 その近くにあるのが林昌寺というお寺で、今回は、カウンターに座られたお客様の情報を元に、その寺の本堂横にある寺カフェ「且坐(さざ)」へ訪問しました。林昌寺は寛永21625年)年創建で、その際建てられた鐘楼門と、鎌倉時代の薬師如来座像が市文化財に指定されている名刹なんだとか。住職の宮地直樹(じきじゅ)さんが、「どなたでも気楽に寺に足を運んでもらうきっかけに」と、修行僧の生活の場だった衆寮を改築して202010月に開かれたそうです。

 名前の「且坐(さざ)」は、「座ってお茶でも飲みなさい」(休む時は集中して休み癒やされなさい)という意味の禅語「且坐喫茶(しゃざきっさ)」から付けられており、厨房は娘さんが担当し、コーヒー・紅茶や手作りスイーツなどを提供されています。でも、「しゃざ」を「さざ」と読み替えている理由は分かりませんでした。

今回は、メニューの中から「おすすめコーヒー」(キリマン・ブレンド)と、日替わりお茶うけセットのイチジク・タルトを注文します。ゆっくり滞在してもらえるよう保温用ロウソクコンロに乗った2杯分のコーヒーが1人前で700円、イチジクたっぷりのタルトは300円と、まめ蔵の店主もビックリのお値段です。

参道入り口の張り紙には「猫になっちゃう喫茶店」と小さく書かれた横に、禅語の「喫茶去(きっさこ)」とあり、「猫のようにまったりと過ごしてほしい」ということなんでしょうが、目の前に並ぶ仏像に見られていると思と、なかなかそんな気分にはなれません。でも、タルトの上に飾られて葉っぱには猫の足跡が彫られており、ちょっとホッコリします。

 コーヒーを飲みながら周りを見ると、レトロな箱型テレビがあったり、木彫りの蓄音機があったりします。そして、目を上に向けてみると「体験喫茶セット」の張り紙があります。コーヒーか紅茶に座禅・写経・写仏のいずれかをセットで1,000円とか。「作務体験30分無料」で、飲み物一杯付きの草取り・拭き掃除・掃き掃除なんてものもあります。

 なかなかユニークなお寺だと思っていると、おもしろい格好の粘土人形もありました。娘さんの説明では、住職がアトリエを作り、子供の日常をモチーフとした粘土人形を制作しているとか。また、自作の紙芝居を作って紙芝居作家としても活動しているらしく、紙芝居を名古屋の夜の繁華街で行っていることがNHK「にっぽん紀行」、CBC、東海テレビ、名古屋テレビで紹介されたようです。それでもって、「夜の紙芝居」なんて本も出していました。

 こりゃ、爪切地蔵尊よりも面白いではないか!お客様の情報でユニークな寺カフェが体験できました。