田の神

人は昔から巨木や巨石といった、大きな自然物に神の存在を意識して生きてきました。そして、土岐市内には駄知町の「稚児岩」、定林寺湖の「巨石群」があり、それぞれ伝説が語られています。そこで今回は、瑞浪市日吉町にある「田の神」として崇められている岩を見に行くことにしました。

 日吉町の中心といっても郵便局くらいしかないのですが、そこから日吉釜戸線で日吉幼稚園の方向へ進むと、右手に広がる田んぼの中に大きは岩が目に入ります。正に田を守る神のように鎮座しているといった趣です。別名「頼政岩」と呼ばれており、瑞浪市観光協会のYoutubeにも説明の動画が作られていました。以下は動画の説明文です。

 『頼政岩の明確ないわれは不明です。頼政岩から望む山には酒波神社があり、源頼政が酒波神社を創建したとされる説や、末社、頼政神社が存在することで何か関わりがあったことと思われます。他にも、頼政伝説として鶴ヶ城近くに自生している双生竹で作った矢で、怪獣ヌエを射落した。以後、そのあたりを神の矢先という意味の神箆(こうの)と呼ぶようになったと伝えられています。田の神として、田の真ん中の大岩の存在には威厳を感じます。』 

 冒頭で「明確ないわれは不明です。」と言ってしまうところが、逆に潔くって好感の持てる内容です。実際、田んぼの真ん中に突然大きな岩が現れるのですから、何か伝説が生まれても当然なんでしょう。ですが、順番から考えれば、近くに流れる川が太古の昔には大きくて、流れ着いた岩の周りの砂地を利用して田んぼが作られたのでしょう。そんな事を言ってしまうと身も蓋もないものの、農耕民族であった人々にとっては命を支える存在の田を守る神に感じられる存在であったことは確かです。