『窓をあければ

風がくる、風がくる。

  光つた風がふいてくる。

窓をあければ

こゑがくる、こゑがくる。

  遠い子どものこゑがくる。

窓をあければ

空がくる、空がくる。

  こはくのやうな空がくる。』

これは、新美南吉の童謡『窓』です。南吉の見た窓は、どのような場所にあった窓なのか分かりませんが、窓から爽やかな光と風が入り、子供たちの声が聞こえてきそうです。そんな窓が「まめ蔵」にはありません。

 窓越しの中庭に植えてある木々も見えませんし、川面の景色も見えませんから、ちょっと目線を前に向ければ涼しげな気分になれるといった店ではありません。むしろ、暑苦しいぽっちゃり体型のマスターの姿しか見えませんから、最悪のロケーションといったところです。

 店舗設計の段階から隣の家と接している理由で、座席位置の窓は填め殺しの擦りガラスとし、透明の窓は吹き抜けにするため高い位置に設けているため、窓からは空しか見えません。そんな「窓をあければ」何かが見える訳ではないのに、お客様が毎日訪れてくれています。窓からの景色を提供できませんが、せめて、店内でコーヒーの香りいっぱい届けている店主です。 

 でも、こんな猛暑の日は、冷たいエアコンの風が一番かもしれませんが。