リブ?溝?

美濃焼の町に住んでいると、時々、「こんなコーヒードリッパーを作ってみた。」といって陶器や磁器で作ったドリッパーを持参されることがあります。その多くがデザイン性を考えたもので、織部焼で作ったものやカリタ製品を模したものなど、機能性を考えたとは言い難い物まであります。

 多くのドリッパーの側面には凸としたリブがありますが、一般的に溝と言ったりするので、本当に切り込みを入れた溝にして凹面にしたり、見た目が良いからといった理由で上部に沢山のリブを加えたりと、「コーヒーを淹れて飲んでみたの?」と言いたくなったりします。ちなみに、リブは英語で「肋骨・アバラ骨」の意味で、「溝」ではないんです。

 このリブの役割については、『コーヒー味わいの「こつ」』(著:田口護)では、「このリブをつけることで、ドリッパーとペーパーフィルターとの間に空気溝ができます。コーヒーの粉に湯を注いだとき、粉と粉の間の空気は、上から湯に押されて出口を求めます。そしてこの空気溝から空気が抜けるのです。」とあります。リブが無いと空気が抜けきらずに粉の表面から上に抜け出し濾過層が破れてしぼんでしまうのです。

 このように、リブによって「空気が抜ける」という説明の他、ネットで検索すると「ペーパーフィルターとドリッパー本体の間に隙間を作り、お湯の流れをコントロールすることです。コーヒー豆に浸透したお湯の流れ方により、味に大きな影響を与えるのです。」といった説明もあります。

コーヒーの味に影響を与えるとなると、リブの形状に過大に評価が向かいやすいのですが、そもそもコーヒーの味は「コーヒー粉の大きさと量」、「お湯の温度と量」、「コーヒーとお湯と接触時間」が大きく関わるものなのです。ならば、リブの形状はコーヒー粉の層とお湯の接触時間に影響を与えると考えるのが妥当だと考えられます。

昨日も、陶磁器のドリッパーを持参された方がありました。「B品だけど。」といって、円錐ドリッパーが少し歪んだものでした。その際、リブについて疑問を持たれていたため、コーヒープレスで淹れたコーヒー液を持参されたドリッパーに注いで、コーヒー液に含まれる微粉の流れを見てもらいました。微粉はドリッパー下部のみだけでなく、リブに沿うように集まっています。良く見ると均一にリブが入っているにもかかわらず、左右で微粉の集まるリブの数が異なることが分ります。(B品だから)

そんな様子を見てもらいながら、コーヒー粉層の中でお湯がどのように流れているかイメージしてもらったのですが、だからといって「このドリッパーがいい。」だのといった評価はしません。大切なのは、そうしたドリッパーの違いによって自分好みのコーヒーが淹れられるかどうかなのです。その方は満足していなかったようですが。

そもそも、誰でも美味しく淹れられるドリッパーなんて存在しないのです。あるのは、私好みのコーヒーが淹れられるドリッパーくらいなんものです。もっとも、ドリッパーを売る側としては「美味しく淹れられる!」というのは必須項目かも知れませんが、個人的にはプロモーションへの力の入れ方しだいだと思うのですが。

松屋式で淹れている私は、意外に関心が薄かったりします。