史上最強資料

先日、あるツイッターに『昨晩はコーヒーアミーゴス中部のオンラインセミナーでエチオピアコーヒーの流通を学んだ。それに関連してエチオピアコーヒーについての史上最強資料を掲げる。知財高裁の平成21(行ケ)10229事件(原告:エチオピア連邦民主共和国vs.被告:全日本コーヒー協会)の審決全文である。』といって、知的財産高等裁判所のリンクが貼ってあります。覗いてみると長文だったため、とりあえずプリントアウトしておきました。

 雨の日の今日、改めて印刷した資料を見ると、これが結構面白いのでした。複数の書籍等から引用されたり、コーヒーの歴史あり、コーヒー生産者の理屈、コーヒー輸入業者の理屈と、下手なコーヒー本よりも読み応えがあります。中でも気になったものを、幾つか切り取っておきます。

『したがって、地理的な面からみて、シダモ地方とシダモコーヒーエリア、あるいは、イルガッチェフェ地方とイルガッチェフェコーヒーエリアとが一致しているわけではない。また、本件商標が付されるコーヒー豆が必ずしも行政区画としての「シダモ地方」あるいは「イルガッチェフェ村」と一対一で対応しているわけではなく、行政区画のシダモ地方にはコーヒー豆の産地として「シダモコーヒーエリア(シダモゾーン)」、「イルガッチェフェコーヒーエリア(イルガッチェフェゾーン)」が存在しているのである。』、名前に惑わされちゃいけないってことね。

『そのコーヒー豆に接するのは、もっぱらエチオピア国の首都アジスアベバに集積され、同所のオークションにかけられているコーヒー豆であり、シダモ地方ないしイルガッチェフェ地域で貿易が行われているわけではないから、地理的名称としての「イルガッチェフェ」(YIRGACHEFFE)の認識は希薄であると思われ、まして、我が国の国内のコーヒー豆取引業者は、輸入業者よりさらに希薄であるというべきである。』、トレサビリティーって意外にそんなもんだよな。

『本書が説明するようにアメリカにおいては、低品質・低価格コーヒーが主要商品であり、高品質・高価格のスペシャルティ・コーヒーは、それに対抗する差別化商品である。しかしながら日本においては、従来からプレミアム・コーヒーと呼ばれる、高品質・高価格コーヒーが主要商品になっている。そのためスペシャルティは,プレミアムを上回る超高品質・超高価格コーヒーとして位置付けられている。つまりスターバックスで提供されているコーヒー(アメリカかオランダで焙煎して輸入)の品質は、従来型喫茶店のそれと同等である。』(ニーナ・ラティンジャー=グレゴリー・ディカム著「コーヒー学のすすめ」の引用部分)、だから、スタバのコーヒーは美味しくないのね。

『UCCは、エチオピアの地名に由来する商標を数多く出願しており、昭和43年には、原告の承諾を得ることなく、「HARRAR」をコーヒーを含む指定商品について出願した(昭43-57658号、甲41の1の3)。UCCは、その後、「HARRAR」商標を平成19年4月25日の放棄による権利消滅まで長期間にわたり保有し続けた。原告は、平成18年ころより、UCCに対して「HARRAR」商標の譲渡交渉を再三申し入れたが、UCCは平成19年4月25日当該商標を一方的に抹消し、原告への譲渡を拒否した。一方、被告は、上記UCCによる「HARRAR」商標の登録については、登録当時から権利消滅時まで何ら異議を述べていない。以上の事実からすると、被告は単なるUCCの身代わり(ダミー)ともみなされる存在と考えられる。』、因果応報ってやつね。 

 資料はバインダーに閉じたから、店内の本棚に保管しておきます。閲覧希望の方はご自由に。