薬学視点で見るコーヒー

 「コーヒーの科学」の著者である旦部幸博氏が、MEDCHEM NEWS 31巻(20211号に寄稿された記事J-STAGEから見られるというので、該当ページをダウンロードして印刷してみました。ちなみに、J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム)というのは、国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) が運営する電子ジャーナルプラットフォームのことで、オープンアクセスになった原稿を閲覧する事ができます。

 寄稿文のタイトルは「薬学視点で見るコーヒー」です。「コーヒーは昔、薬だった」といわれる言葉から始まる文章を見ながら、コーヒーについて調べ始めた頃に、コーヒー豆を煮だした液を飲んだことや、コーヒー豆の果肉を食べたことを思い出しました。

 イエメンのスーフィー(イスラーム神秘主義者)が眠気覚ましに飲んだ、エチピア原産の植物カートの葉からつくられたものの代用品として、コーヒー豆からつくる方法が考案されたことなどの経緯に触れながら、「薬理作用」としてのコーヒー豆の焙煎・抽出へと内容が進みます。

 面白いのは「修治」という言葉が登場した事です。漢方では、生薬原料を「蒸す」「煮る」「炒める」などのひと手間を加える加工工程のことで、このようなひと手間をかけることで、特定の効果を高めたり、生薬の副作用を弱めたりすることを目的としています。コーヒー豆も焙煎という高温に煎る工程が加わることで、生豆中の成分が化学変化して独特な香味を生み出します。また、コーヒー豆の成分を取り出すために煮出す行為も「修治」に通じるものがあるという話は、やはり薬学視点で見ると興味が湧いてきます。 

 最近は、老眼が進んでコーヒーに関する書籍を読むのが億劫になりがちでしたが、このくらいのコラムなら気楽に目を通せるので楽しめました。