手作りの金属フィルター

 「こんなん作ってみました!」そう言って、鉄工所に勤めるお客様が手作りの金属フィルターを渡してくれました。どうやらSNSで金属フィルターの存在を知り、試しに作ってみようと工場内にある材料で加工したようです。

 こうやって自分でやってみようと行動に移す方は少なく、中々好奇心旺盛な方だと感心しきりです。完成品を使用し、友人とペーパーフィルターと飲み比べをしたようですが、好みは別れてしまい納得いかない様子です。フィルターの角度を調べたり、金属フィルターを上手く折りたたんで縫い上げるなど、苦労の作であることが伺えるフィルターであったこともあり、コーヒーの味に満足いかないのかも知れません。一応、金属フィルターとペーパーフィルターの特徴を説明し、味覚に影響を与える要因については納得されたようです。

 お客様が帰られてから、頂いた金属フィルターを煮沸してから試してみます。松屋式の金枠に乗せ、抽出方法も松屋式で淹れてみますが、メッシュの粗さもあってか注湯の落ちる速度が予想以上に速いのです。抽出後の深煎りケニアのコーヒー表面には、細かくオイルが浮かんでいるのが確認できます。コクのあるコーヒーに仕上がったかなと一口飲むと、あれ?随分あっさりしているではないですか。やはり、メッシュが粗いためにコーヒー粉の層を通過する時間が短く、充分にコーヒー成分が抽出しきれていないようです。カップの底にも随分多くの微粉が残っていました。 

 松下幸之助さんの名言の一つに、「百聞百見は一験に如かず」という言葉があります。金属フィルターを自作したお客様も、実際に作ってやってみて気付いたことがあったようです。何事もやってみなければ分からない。だからこそ、時として、やらないことは人生の大きな機会損失となる場合があったりします。今日は、お客様から学ばせてもらいました。