虎・虎・虎

「来年の事を言うと鬼が笑う」と言いますが、今年も残すところ2か月余りとなりました。2年続いたコロナ禍での生活にもウンザリし、来年こそはマスクが不要な日々を過ごせると良いのですが、将来のことはわからないのだから、あれこれ言っても意味がないのかも知れません。だから、予測できない未来のことを言うと、がバカにして笑うのでしょう。

 まあ、鬼に笑われても構わないので、来年の干支である「寅」に纏わる場所にでも行ってみようと出かけたのが犬山市です。「寅」じゃなくて「犬」か?共に十二支の一つではありますが、犬山市にはサル、キジ、イヌが登場する桃太郎神社をはじめ、いろいろとユニークな所があるのです。

 先ずは、犬山市の南端にある尾張信貴山の山頂付近にある泉浄院です。ここは、昭和7年に名古屋の資産家と楽田(小牧・長久手の戦いで秀吉本陣の楽田城があったところ・犬山市)の有力者が協議して、商いと戦いに関係が深い毘沙門天を大和の信貴山から勧請し創建されたようです。

泉浄院を目指してナビを設定すると、行き止まりの道を案内してくれます。困って近くの喫茶店「桃源郷」へ立ち寄り、コーヒーを飲みながら年配のオーナー夫婦に尋ねますが、残念ながらご存知ありません。店内でモーニングを楽しむ地元の方にも尋ねても誰も知らないとこのと、俗界を離れた店では聞き込み不可能と感じ、スマホのルート検索で再び向かうことにします。

今度は違う道を案内してくれますが、薄暗く細い山道を進むことになり、まるでポツンと一軒家を探す場面に出てくる道のようです。しばらく走ると参道が見えて、やっと一安心。その参道を登り始めると、途中に狛犬ならぬ「狛虎」が鎮座しています。毘沙門天王が寅に縁のある神として信仰されているため、犬ではなくて虎になったようです。良く見ると、ちゃんと縦縞が見てとれます。

参道を登った右側には、鮮やかな朱色の多宝塔が立っています。戦いには縁がないですが、商いは大いに御利益をいただきたいので、本殿でしっかり拝んでこうと左側の本殿に行きますが、鉄の扉が閉まっており入れません。扉越しに本殿などを覗くと全て閉まって誰もいないように見えました。そんな訳で、今回は山の中を登ったにも関わらず、何もご利益はなさそうです。

 続いて訪れたのが、地名に「虎熊」と付く場所です。愛知県犬山市今井虎熊という住所で、今井が大字で小字が虎熊という虎と熊がくっ付いた面白い地名です。そもそも、熊は日本に住む獣ですが、虎は日本にいないはずですから不思議でなりません。虎熊という名字の方が大分や兵庫にあるそうなので、昔に移住してきたのかもしれませんが、何か見つかるかもと探してみると、「虎熊集会所」と書かれた建物が見つかります。近くには、組当番で灯りを付ける石灯籠が2基あるくらいで、虎熊の謎は分からないままでした。 

犬山市内には、前原にある㈱ワイジェーエスの社長が造った「トラ・虎・寅のコレクション博物館」なんてのもあったり、東古券に店を構える、明治4年創業の仕出し料理店「寅屋」もあります。そんな虎に纏わる場所のある犬山市でした。