ダイヨーコーヒー・ブレンド

 アベマキという木があります。西日本を中心に見られるブナ科コナラ属の広葉樹で、岐阜県内では南部に多く自生し、美濃加茂市の至る所に分布しています。昔はマキとして切り出され、人々の生活を支えました。しかし、化石燃料の広がりとともに昭和30年代以降は山に人が寄り付かなくなり、アベマキも取り残され、やがて山は荒れ、獣のすみかとなり、人々の生活をおびやかすようになります。

美濃加茂市では、平成27年に「里山千年構想」を打ち出して山の整備に乗り出し、その事業の目玉の一つが切り出したアベマキの活用でした。学校の勉強机の天板(朝ドラみたい)やペン、置き時計などに生まれ変わらせて、淡いピンクと赤褐色のコントラストが評判をえてきました。

そんな折、ひょんな所で「abemaki coffee」なるものをもらいました。ドリップバッグ・コーヒーで、パッケージには「アベマキの木片チップを焙煎しレギュラーコーヒーと合せたら、爽やかな香りと優しいコクのある美味しいコーヒーが誕生しました。」とあります。

裏面の説明を見ると、商品名はアベマキ入りレギュラーコーヒー(粉)、原材料名にはコーヒー豆(生豆生産国コロンビア)、アベマキ(美濃加茂市産)とあります。美濃加茂市の里山千年構想から生まれた商品なので、美濃加茂市内の業者が作ったのかと思いきや、販売者は岐阜市の「合同会社ツバキラボ」で、製造者は養老町の「焙煎屋 克之佑」でした。

そのへんの理由は、中日新聞Web版(202115日)を見ると分かります。そこには、『岐阜市椿洞の木工家和田賢治さんと、コーヒー豆などの焙煎を手掛ける同市養老町の川井克之佑(かつのすけ)さんが、県南部に多く自生する広葉樹「アベマキ」の木片チップを焙煎してレギュラーコーヒーに混ぜた「アベマキコーヒー」を開発した。未知の味への挑戦だったというが、意外にもコーヒーが苦手な人でも飲めるすっきりとした風味に仕上がった。アベマキコーヒーは、和田さんがアベマキから家具などを製作する過程で大量に出る数ミリの木片チップを活用。川井さんが焙煎し、ひいたコーヒー豆に混ぜた。アベマキの香りが加わったことでコーヒーの苦みが抑えられ、爽やかな香りと優しいコクが生まれた。川井さんは「サクラやナラ、クリ、ブナも試したが、アベマキだけは明らかに風味が変わり、飲みやすかった」と話す。』アベマキありきじゃなかったんだ。

でもな、なぜアベマキをコーヒーに利用するのかよくわかりません。アベマキを代用コーヒーの材料として考えているのか、木片チップの再利用として考えるのか、使用するアベマキの量がある程度あるものとして考えるなら、何か別の用途がありそうな気がするのです。代用コーヒーとしてとらえるのなら、ブレンドの割合を極限まで増やすべきであろうし、このままでは「abemaki coffee」ではなく、ダイヨーコーヒー・ブレンドってな感じになっているんです。だから、コーヒーとしてそこそこ飲めたりします。 

美濃加茂市へ行ってみたら、なんか面白いコーヒーに出会いました。