デカフェ

カフェインは覚醒作用や利尿作用などがあると同時に、人によっては摂取量や体質により頭痛や胃痛、不眠などの症状を引き起こすことがあります。また、体内で鉄分やミネラルの吸収を妨げる作用を持つことも知られているため、高濃度のカフェインを摂取することで胎児の成長が阻害される可能性が示唆されており、WHO(世界保健機関)では妊婦のコーヒー飲用は一日に34カップにとどめるべきと勧告しています。

 とはいっても、個人的には、嗜好品の中ではタバコやアルコールに比べて弊害の少ない飲み物だと思うし、タバコとアルコールを常用しない私にとっては大切な癒しの飲み物なのです。だから、カフェインを取り除いたデカフェを好んで飲むことはありません。ただ、商品としてはデカフェの豆は提供しており、昨年のコーヒー豆販売額全体の1.6%程度になっています。全日本コーヒー協会の統計資料を参考に計算すると、2019年データではデカフェの割合は0.5%程度ですから、まめ蔵での販売割合は比較的多いことになります。

 そんなデカフェを飲まれる方の中には、正しい知識でカフェインの摂取を抑えていない方もあります。いわゆる口コミとか、テレビや雑誌で見たような、といった曖昧な根拠です。先日も、「緑内障にカフェインが良くないらしいから。」という理由でデカフェを注文されました。「そうですか。私も緑内障ですが。」とお話しし、「心配ならば眼科医に相談されてはいかがですか?」とお答えしました。

 Googleで「カフェイン コーヒー」で検索すると、いくつもの検索結果があらわれます。その一つ、「医療法人 王子総合病院」のホームページには、『日常生活の留意点でよくお茶について聞かれますが、コーヒー、お茶などのカフェインは度を越した過剰摂取でなければ問題ありません。未だに緑内障ではコーヒーは禁忌と思っている方もいるようですが、日常コーヒーやお茶を飲む程度で体内に入るカフェインでは眼圧を上げないことがわかっています。』となっています。

 そんな誤解があるのは、かつては緑内障の治療の一環として、水分摂取の制限や、お茶やコーヒーに含まれるカフェインが緑内障に良くないと考え、これらの摂取を控えるように指導する時期があったようです。現在では、度を越した過剰摂取でなければ水分もカフェインも何ら問題がないと考えられています。

 緑内障とコーヒーに関するものでは、米国眼科学会の関連雑誌であるOphthalmology glaucomaに掲載された京都大学の論文が時々引用されています。『京都大学は2007年から、滋賀県長浜市にお住いの約1万人を対象に、生活習慣や身体データ等の情報を追跡調査する「長浜スタディ」を行っています。今回の研究では、長浜スタディの参加者のうち、緑内障患者ではない9418人を対象に、コーヒーを飲む頻度と健康診断で測った眼圧の関係を調べました。その結果、コーヒーを1日3回以上飲む人は、1回未満の人と比べて眼圧が平均で約0.4mmHg低く、飲む回数が1回、2回と増えるにつれて、眼圧が低下する傾向が認められました。』というものです。

 私も眼圧が高いと病状が進行するといわれ、眼圧を下げる目薬の点眼を毎日行っています。(眼圧だけが原因ではないと思う)一般に、1剤の緑内障点眼薬で眼圧が2〜3mmHg下降すると、薬剤がよく効いていると判定されるそうですから、コーヒーを一杯飲んで0.4mmHgの眼圧下降効果があったとしても、緑内障の予防や治療にはあまり意味が無いので、きちんと点眼を行い、癒しにコーヒーを飲むことをお勧めします。まあ、あくまでも個人が判断する事ですが。