11歳の君へ

新型コロナウイルス感染拡大を受け、土岐市内の公共施設が午後8時で閉館となったため、毎週行っていた手話サークルの学習会が出来なくなっていました。それもやっと解除となり、今週から再開することとなりました。久々の学習会となることから、今回は『11歳の君へ ~いろんなカタチの好き~』(撮影/編集/監督:今村彩子)というドキュメンタリーDVDを上映することにしたのです。

 DVDの内容は、ろうLGBTのそれぞれの生い立ちや仕事、家族のことについてのインタビューとLGBTの知識編の二部構成となっており、第一部の「それぞれの生き方好き」では、岐阜県関市出身のろう者も出演しています。第二部の「もっと知ろう」では、・4つの性(からだの性・こころの性・好きになる性・見た目の性)・LGBTの手話表現・傷つける言葉・アウティングについて・カミングアウトについて、といった項目で説明がされていきます。

L=Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)

G=Gay(ゲイ、男性同性愛者)

B=Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)

T=Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)

この頭文字をとったものがLGBTです。近年ではマスコミでも取り上げられることが多くなり、有名人もLGBTを公表している人も居ることから馴染みはありますが、正直、自分が抵抗なく接する事が出来るかと言えば自信がありません。

 監督の今村彩子さんによれば、この映画の制作のきっかけとなる出来事があったそうです。『去年の秋、友人から「話したいことがある」と言われ、カフェで二人で食事をしている時に「自分はゲイなんだ」とカミングアウトを受けました。親にも職場の人にも話していない大切なことを私に話してくれたことで、心が揺さぶられました。手話通訳者として活動している彼は、ろう・難聴の中にはLGBTの人たちもいることも話してくれました。これがきっかけで、ろう・難聴のLGBTのことを考えるようになりました。』

 確かに同じ人間なのですから、障がいのあるなしに関わらず起きることです。私も20代の頃、脳性まひの方から「アダルトビデオを借りてきて欲しい。」と頼まれたことがありました。文字盤を使ってコミュニケーションをして懇願された時には、ショックを受けた記憶が今でも強く残っています。その時から「同じなんだ。」と思ったものです。

 ろう・難聴LGBTについて、今村さんは次のように言っています。『「耳がここえないこと」は、車いすや白杖と違って、見ただけでは分かりません。また、「LGBTであること」も目に見えません。耳が聞こえないLGBTの人は、抱える悩みも多く、誰かに相談したくてもLGBTに関する知識や理解のある人が少ないため、アドバイスを得ることが難しいのが現状です。また、LGBTのコミュニティーに参加したくても、コミュニケーションの壁が立ちはだかります。その解決方法の1つとして手話通訳を頼みたくても、自分が当事者であることが通訳者に分かってしまうため、ひとりで悩みを抱えてしまうことが多いのです。』

 ろう・難聴者と関わっている身としては、相談にのれる通訳者でいられるのだろうか、やはり自信がありません。理解者のフリはできるかもしれませんが、所詮、理解しているフリなのです。だから、正しい知識だけでも身につけようと思います。昨晩はそんな気持ちにさせる上映会でした。

今村さんは、このDVDで伝えたいこととして、『人を好きになることは自分を知ること。

DVDでは、カテゴリーにあてはまらないから変だとしてしまう今の社会に、それでいいのかな?と疑問を投げかけたいと思っています。そして、広い世界で、自分が好きと思える人に出会えたなら、それはとても素敵なこと、かけがえのないものだよということを伝えたいと思います。人を好きになることや自分をカテゴライズしてしまうと、本当は多様な自分、自覚していない自分、未知の自分をつぶしてしまうことにもなってしまいます。本当の自分や本来の世界は、とても豊かで面白く楽しいことを伝えていきたいと思います。』

 自分にも、「本当の自分や本来の世界は、とても豊かで面白く楽しいこと」なら話せるかな。