Challenge Coffee Barista

 長雨が続いた日、「そういえば、Challenge Coffee Baristaの結果はどうなったのかな?」と思って調べてみました。「Challenge Coffee Barista」とは、日本サスティナブルコーヒー協会が主催する、障がいのある方たちのバリスタコンペティションです。コーヒーを通して、障がいの有無に関わらず、すべての人がその人らしく活き活きと、命を輝かせて生活できる「インクルーシブな社会」となることを願い、技術の向上と新しい雇用の創出を目指そうというものです。

 調べてみると、大会は512日に品川プリンスホテルで行われており、コロナ禍もあって無観客で行われましたが、当日の模様を収録したものをYouTubeで観ることが出来ました。動画は2時間を超える内容でしたが、営業中の合間を縫って全て観てしまいました。

審査は「ブレンド審査」と「抽出技術審査」の2部構成になっており、「ブレンド審査」では、大会主催者から事前に提供された焙煎豆3種を使って、各チームが考案したオリジナルブレンドを、会場にいらした方々が試飲し、風味バランス、ブレンドのストーリーなどを総合的に評価し審査・投票します。(ただし、抽出は主催者が用意したマシン抽出)

「抽出技術審査」では、各チームが持参したオリジナルブレンドを、主催者が準備した水(南アルプスの天然水)、抽出器具(カリタのウェーブドリッパー)を用いて審査員の前でコーヒーを抽出し、接客、プレゼンテーションを行い、ブレンド、抽出技術、接客、プレゼンテーションなどを総合的に評価。といった内容です。

同じ抽出器具を使用するにしても、蒸らし時間の差があったり、蒸らしで注湯する量が明らかに少ないと分かるチーム、蒸らし後に、一度に注湯する量が多めで注湯回数が少ないケースや、少量の注湯を何回にも分けて繰り返し行うチームなど、指導された方の淹れ方の影響を受けていることが伺えます。

本来、抽出から接客までを行っている方達ばかりではないため、ぎこちない動作が目立つチームもあります。普段はコーヒー豆の焙煎とハンピックを主にしているところ、パン工房であったり、レストランで働いているところなど、障がいの内容や日頃の作業との違いからもチームごとに差があるように見えます。抽出量をスケールで正確に確認するチームもあれば、慣れた手付きで目視で確認するチームもありました。中には、事前にブレンドを作らず、本番でブレンドして使用するチームや、コーヒー豆を計って挽いた筈なのに、挽いた粉をドリッパーに入れた後にスプーンで減らすなど、段取りの悪さも目につきます。

面白いと思ったのが、静岡の就労支援会社である株式会社バタフライ・エフェクトのチーム「カラフルキャンバス」です。指定の300ccの抽出に対して36gとたっぷりの豆を粗めで使用し、200ccまで抽出したら100ccのお湯を加えるというものです。蒸らし時間は1分と短めなものの、松屋式に似た抽出を行っていたのです。

 このチームは静岡県清水市にある就労支援B型事業所「Canvasキャンバス」で働く人たちのです。コーヒー豆を焙煎し、焙煎豆やドリップバッグとして販売いていますが、抽出はコーヒープレスを普段使用しているため、ハンドドリップの抽出は初めての経験だったようです。個人的には応援したくなったチームでしたが、結果発表を見ると第1位は、第一生命チャレンジド株式会社所属の「dl.café(ディーエルカフェ)」でした。

 第一生命チャレンジド株式会社は、第一生命保険株式会社の特例子会社として20068 月に設立されています。先ほど紹介した就労支援B型事業所とは異なり、障がいのある人に配慮した子会社で、一定の条件を満たすことで親会社の障がい者雇用率に算定されという、新しい就労環境の職場になります。そこでは、第一生命の日比谷本社2店舗と豊洲本社1店舗の合わせて3店舗のカフェ運営を行っており、日替わりコーヒーや本格的なカフェラテなどを販売しています。当然、見ていても落ち着いて抽出し、接客も素晴らしく抜き出ていたと思いましたから。

最後に、総評の際に審査員の上野登氏は、「プロの抽出士として審査し、とても満足している。」、石谷貴之氏は、「楽しんで挑まれている様子が良かった。」、川島良彰氏は、「競技時間を15分にしていたことを心配していたが、全チームがクリアした。」といって、初の障がいのある方たちのバリスタコンペティションに満足げでしたが、正直、もう少し上を目指すための方向性を示す厳しいアドバイスがあれば感じました。 

「インクルーシブな社会」となることを願い、技術の向上と新しい雇用の創出を目指そうとするならば、その雇用に見合うだけの一定のレベルは担保されなければならないと、ちょっとだけ障がい者と関わっている私は考えます。素晴らしい企画を批判する訳ではなく、素晴らしい企画だからこそ、次のステップに行ける先を照らしておくべきだと思ったのでした。

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コメント: 2
  • #1

    帰山人 (土曜日, 29 5月 2021)

    当日に生配信を見始めたんですがね、MCが開放型のマウスガードで会場内を歩き回っている冒頭で「あぁダメだな」と思って見るのを打ち切りました。感染対策にまで美観の多様性をインクルーシブしなけりゃいけないんですかね? ばかばかしくて見ていられないw

  • #2

    まめ蔵 (土曜日, 29 5月 2021 13:31)

    美人のMCを使ってマスコミ受けを狙ってマウスガードを使用したんでしょうが、私はそこよりも、ダサいグレーのパンツが気になってしかたなかったのですよ。都会じゃ、あ~いうのが良いんでしょうかね。