今は根を張るとき

 今年もゴールデンウイークを前にして、緊急事態宣言や非常事態宣言が発出されています。1年前から「お願いします!」を繰り返しているのですから、緊張感も薄れて「お願い」という言葉が薄っぺらく感じてしまう気持ちも分からなくもありません。しかし、本当は人の動きを徹底的に止めて感染拡大を止めなければなりません。既に、大阪では医療崩壊が起こっており、自宅での待機中に亡くなる人が増えているのですから。

 意図を持って偽ったり誇張して伝える人、それに対し真摯向き合う人や目をそらす人、さらには無関心な人、そんな人間を嘲笑うかのように新型コロナウイルスは変異し続けています。全ては人間の行いから生じていることなのですから、個々の人間がどう対処するかにかかっているのですが。

 感染しない、感染させないことを考えながら昨年から席数を減らすなど、コロナ禍での営業を続けていますが、今のように来店客数の減少傾向が続いているのを見ると、「いったい何時まで続くんだろうか?」と不安になったりします。そこで、まもなく4月も終わる頃になったこともあって、昨年の1月~4月までの実績と比べてみることにしました。

 一番気になる来店客数ですが、昨年比84.7%と意外にも減少幅は少ないと感じています。平日の来店客数が少ないことから、70%以下だろうかと考えていたためです。実際は週末の来店客数が増加しカバーしていたのでした。そして、来店客数×客単価=売上となるように、売上も同様に減少しているかといえば、93.2%とそこまで落ち込んでいないのが実態です。その理由は、コーヒー豆の売上が111.1%と前年を上回っているためです。

 昨年には、来店客数の減少は6月以降になると徐々に回復し、11月まで大きな減少は見られませんでしたが、今年はワクチン接種が進むまでは回復しないだろうと考えています。そうなると、コーヒー豆の販売が多少多くなっても全体の売上をカバーするのが難しくなりそうです。まあ、こんな時には背伸びせず、今は見えない所に根を張るときなのでしょう。長い間にはそうした時間をいかに過ごすかが大切になってきますから。

 コロナ禍で暗い話ばかりかといえばそうでもなく、嬉しいこともたくさんありました。以前、初めて彼女を紹介してくれたお客様が婚約した報告をしてくれたり、ふるさとに帰ったお客様が、4月から小学校の教諭として奮闘していることを話してくれました。また、実家の仕事を継ぐために次々と新たな挑戦をしている様子を話してくれる方など、自分の子供たちのような若い方から刺激を受けることもたくさんあったのです。 

 人との関わり方が希薄になったと言われますが、カウンター越しに楽しい話題は尽きません。珈琲屋になってよかったと思える瞬間です。