コーヒー豆を売りながら

 「緊急事態宣言」の次に待っていたのは、「まん延防止等重点措置」でした。経済もオリンピックも並行しての感染制御など出来るはずもないのに、こんな状態がいつまで続くのでしょうか。新型コロナウイルス感染収束の兆しが見えない中、様々な分野に大きな影響を与えていますが、株式会社コメダホールディングスの2021年2月期第3四半期(2020年3月~202011月)決算説明資料を覗いてみると、地方の珈琲屋にも共通するデータが見えてきます。

 資料の中の「卸売収入の前年同期比推移」は、コメダにおける前年同期比ではあるものの、その卸売収入は来店客の推移と連動するものであり、まめ蔵の来店客数推移ときわめて似たデータになっていました。4月・5月の緊急事態宣言による来店客数激減から、徐々に回復傾向にあった状態が12月から再び感染拡大とともに減少しはじめます。そして、今年に入っても減少傾向には変わりありません。

郊外型喫茶店と珈琲屋と比較することに無理があるかも知れませんが、「豆売りが無かったら、いったいどうなっていたんだろうか?」と思う時が何度もあり、喫茶をメインにしている店にとっては厳しい現実が待っていることを肌感覚で知りました。

 既に、その厳しさが表れているものもあります。スペシャルティコーヒーの市場をけん引してきたと言われる丸山珈琲は、昨年10月に表参道Single Origin Store、鎌倉店、MIDORI長野店を閉店し、西麻布店は物販・商談スペースなどを備えたショールームに、尾山台店は物販とテークアウトの業態に転換しています。喫茶の来店客減少の代わりに店頭での豆売りが増加し、ドリップバッグや通販、スーパーでの売り上げを伸ばし、さらには、コーヒー生豆の卸しも始めています。 

 コロナ禍を過ごしたお客様のニーズがどのように変化し、それに合わせるべきか、じっと我慢するのか、ただ迷うだけなのか、こんなときは「なぜ自分が珈琲屋を始めたのか」を再確認し、楽しいと思えることを選択していこうとコーヒー豆を売りながら思うのでした。