カカオとコーヒー

 Amazon Prime Videoに、『The Taste of Nature 世界で一番おいしいチョコレートの作り方』というオリジナル映画があったので、ハンドピックをしながら見てしまいました。監督の長谷川友美さんが南米アマゾンへ野生のカカオを探しに行く安達の旅路を約2年半かけて密着し、美しい映像とともにチョコレートの奥深い世界を描いているといったもので、映画の『A Film About Coffee』とコーヒーハンターを足して3で割ったような内容です。

 早い話、東京・中目黒の green bean to bar CHOCOLATE ショップのプロモーション映像といえばそれまでなのですが、それだけとは言えないのが、チョコレートの原材料となるカカオとコーヒーには共通する部分があるからでしょうか。

映画の中でも説明していますが、カカオの生産国は赤道を挟んで北緯20度から南緯20度の、「カカオ・ベルト」といわれる地域にあります。ちなみに、コーヒーの生産国は北緯25度から南緯25度の、「コーヒー・ベルト」や「コーヒー・ゾーン」と呼ばれています。

コーヒー業界では第3の波(サードウエーブ)なんて言葉が使われていますが、カカオにも、産業革命による機械化により生産量が爆発的に増え、一定の味となるように添加物が加えられた第一の波。味や見た目を重視するブランド・チョコレートへ移り、クーベルチュールというチョコレートブロックを溶かして加工されるも、カカオの品質を重視しなかった第2の波。そして、ビーン・ツー・バー・チョコレートと呼ばれる、カカオ豆から自分たちで一貫して作るチョコレート加工が始まった第3の波です。

 その第3の波に乗って野生のカカオを探し求めるといったストーリーの中で、生産者の貧困問題をとりあげてはいるものの、これもコーヒーと同じく、圧倒的な取扱量を誇る大手メーカーにより解決には至らないという訳です。世界のチョコレートの売上げの60%をトップ5のメーカー(マース、フェレロ、モンデリーズ、明治、ネスレ)が占めているのもコーヒー業界と似ており、生産者への最低価格を保証するフェアトレード認証などの仕組みをメーカーが避けたり、あるいはごく一部の商品にしか適用しようとせず、実際にはフェアといえるものにはなっていない場合も多いのです。そもそもフェアトレード認証の基準が甘く、最低価格やプレミアム(奨励金)も安いことは、チョコレートを食べる人もチョコレートをつまみながらコーヒーを飲む人も知らないのですから。 

私達がチョコレートを食べて感じる幸せ背後には、西アフリカや中南米のカカオ畑で蔓延する極度の貧困、児童労働、強制労働、不公平な貿易等が存在します。チョコレートのように甘くない現実があることは知っておくべきでしょう。メーカー側からはけっして伝えられないことだから、自分から知ろうとしなければいけないのです。コーヒーもこれ然り。