大人の絵本

 お客様と接客中に郵便局の配達員が届けてくれたのが、『知りたい食べたい熱帯の作物 コーヒー』(監修:石脇智広 絵と造形:堀川理万子 出版:農山漁村文化協会)でした。「そうだった、Amazonnでポチッとしたんだ!」と思い出しながら本を開きます。

 この本は農山漁村文化協会発行する、「知りたい・食べたい熱帯の作物シリーズ」バナナ・コーヒー・パイナップル全三巻の内の一つとなる児童図書です。漢字にはルビがふってあり、絵と写真で説明されて、コーヒーの歴史から産地の様子、コーヒーノキに実ったコーヒーチェリーの収穫から焙煎、抽出と飲用方法について詳しく記しています。

 今どきの本らしく、QRコードを読み取ると動画や資料を見ることが出来るようにガイドしてくれるといった工夫がされており、便利な時代になったものだと感心しきり。

・タンザニア北部の小農家(動画)

・全日本コーヒー協会 統計資料(資料)

・タンザニア北部の大農園(動画)

・エチオピアのコーヒーセレモニー(動画)

・コーヒー栽培の概要(動画)

・コーヒー精選の概要(動画)

・フライパン焙煎のやり方(動画)

 全部で7つのQRコードで統計資料やYoutube動画で詳細を確認できるものの、コーヒーの栽培・精選の概要には僅かに字幕があるものの、バイヤー向けと思われる内容で書かれているために理解困難のうえ、字幕やナレーションのない動画に至っては、小農家の手廻しパルパーと大農園の精選工程の違いや発酵槽、アフリカンベットによる乾燥工程も児童書としては不親切といったところです。

 ザビ病やカットバックの説明は中途半端は否めず、フライパン焙煎のやり方も本の内容ではフライパンを頻繁に反してヘラで万遍なくかき混ぜているのに、動画では菜箸でかき混ぜるのみとなって煎りムラのある焙煎とは言えない代物になっています。さらに、農山漁村文化協会が発行する本だけに、「タネをまこう!」とか「さあ、収穫だ。果肉を食べてみよう」というくだりは、「どこで赤い実を手に入れるんだ?」って突っ込みたくなります。

 本の内容については児童書らしからぬ細部にいたって書かれており、児童書というよりは「大人の絵本」、「コーヒー好きの参考書」といった出来栄えなのかもしれません。

 「あとがき」で、監修の石脇智弘氏が「いま知っておいていただきたいのは、まずは植物としてのコーヒーのこと、そしてそれを遠い国で、わたしたちのために一生懸命栽培している人たちがいることです。すべての関係は、知り、興味をもつところから始まります。」、そして、「もうひとつ知っておいていただきたいのは、みなさんが心をこめていれることで、1杯のコーヒーはみなさんのお父さん、お母さんなどまわりの人たちにおいしさとともに大きな幸せを届けることができるということです。」と伝えています。 

 小さな珈琲屋の店主として、この大人の絵本を読みながら、お客様へコーヒーのこと産地のことを伝えながら、家庭で幸せの輪が広がることを願って日々焙煎することを、改めて考えてみるのでした。