再びSDGs

 20197月にJICA中部(なごや地球ひろば)でコーヒーサロンIN名古屋が開催され、「コーヒー危機とSDGs」というテーマで意見交換されました。その際、川島良彰氏から「池本先生と一緒にコーヒーとSDGsについての本を出そうと考えています。」と聞いていましたが、いよいよ今年の3月中旬に「コーヒーで読み解くSDGs」という本が出版されることになったようです。

 でも、その頃からSDGsというものに違和感を覚えており、今でも時々マスコミがSDGsを話題にする度に、いったいどれほどの人がSDGsの内容を認識しているのだろうかと思ってしまいます。カラフルに色分けされた17の目標のロゴは見たことある人でも、具体的な目標の一つでも正しく言える人はいったいどれだけいるのでしょうか?

1    貧困をなくそう

2    飢餓をゼロに

3    すべての人に健康と福祉を

4    質の高い教育をみんなに

5 ジェンダー平等を実現しよう

6 安全な水とトイレを世界中に

7 エネルギーをみんなに、そしてクリーンに

8 働きがいも経済成長も

9 産業と技術革新の基盤を作ろう

10 人や国の不平等をなくそう

11 住み続けられるまちづくりを

12 つくる責任 つかう責任

13 気候変動に具体的な対策を

14 海の豊かさを守ろう

15 陸の豊かさを守ろう

16 平和と公正をすべての人に

17 パートナーシップで目標を達成しよう

 そして、17の目標にはそれぞれ細かいターゲットが設定されており、全部で169のターゲットがあります。例えば、「5 ジェンダー平等を実現しよう」には9個のターゲットで構成されているのです。

5.1 あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。

5.2 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性及び女児に対する、公共・.私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。

5.3 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。

5.4 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。

5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。

5.6 国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、ならびにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。

5.a 女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。

5.b  女性の能力強化促進のため、ICT をはじめとする実現技術の活用を強化する。

5.c ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性及び女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。

 これを見た限りでも、世間で某会長が女性差別発言したため辞任を余儀なくされたとか、それを先導したマスコミがそれみたことかと言わんばかりといったことが目立ってはいるものの、「5 ジェンダー平等を実現しよう」に込められた目標にはもっと大切なものがあることに気付かねばなりません。

 一般社団法人SDGs支援機構によれば、2018年3月にユニセフが公表した最新の推計データでは、世界中で18歳未満の子ども時代に強制結婚させられているのは年間1,200万人。たった1日で3万人の女の子が望まない結婚をさせられていることになります。2030年までにこの問題を解決することができなければ、新たに1億5,000万人が児童婚をさせられ、将来への希望を絶たれ続けてしまうといいます。

 また、アフリカや中東、アジアの一部の国々で行われている女性性器切除(female genital mutilation)の実態も見逃せません。切除が行われている国の数は世界約30カ国、切除されている女の子の数は、これまでに2億人以上、15歳未満の女の子の数4,400万人、手を打たなければ2030年までに切除を受けることになる15歳から19歳の女の子の数1億5,000万人以上と推計されます。

 世界人口の半数を占める女性と女児がジェンダー差別なく社会に参加することができれば、多くの国や途上国が抱える経済成長、貧困や教育といった様々な課題解決をすることができる可能性が広がります。ジェンダー差別がなくなれば、途上国を中心に世界で起きている、いたたまれない差別に苦しむ人たちが救えるだけでなく、多ければ2桁の経済成長率や社会開発の成長が見込めるとも言われています。

 こうした事実を知ることも知らせることもしない世の中って、やはり何処かおかしい気がしてしまいます。国内企業のSDGs取組み状況を見ても、女性社員採用を増やしているとか、役職者への登用が多いとかを掲げてはいるものの、そもそも見るべき目標はそれだけではないことを知るべきでしょう。 

 来月中には、「コーヒーで読み解くSDGs」という本が届く予定ですが、はたしてSDGsをコーヒーで読み解くことが出来るのか?そんなことを考えながら、珈琲狂からいただいた深煎りのエチオピア・イルガチャフのコーヒーを飲み干すのでした。「そもそも開発なんてやめればいいのに。」