ニッパチの法則

2月になると近所の酒屋の店主がやってきて、「2月と8月は暇だワ~。」と言いながらカウンターに座りホットミルクを注文されます。(この方、酒もコーヒーも苦手なんです。)確かに、2月は毎年来店客数が少なくてコーヒー豆の販売額も減少する月です。ただし、8月については夏場の需要減少もあって、特に8月だけを限定できないような気がします。

商売の世界には「二八(ニッパチ)の法則」という俗語があり、2月と8月に売り上げが下がる状況を示した言葉です。経済産業省のホームペジでも経済解析室ひと言解説集の中で取り上げており、「二八」現象について、第3次産業活動指数などを用いて検証していました。

そのグラフを見る限り、自動車小売業には当てはまりませんが、小売業の活動が2月に落ち込むということは確かなようです。一方で、8月に前後の月に比べて落ち込むかというと、そういう傾向は読み取れません。飲食料品小売業では、むしろ8月の販売量が多くなっています。小売業全体で言えば、2月の落ち込みや12月の盛り上がりが特徴的で、8月の水準は「平均的」と言えそうです。

ただし、百貨店や総合スーパーのような各種商品小売業と織物・衣服・身の回り品小売業では、8月と9月に販売量が明らかに下がるという動きを見せています。さらに、百貨店販売額の約5割を占める衣料品では、2月と8月の落ち込みが顕著にみられます。この結果、百貨店販売額合計でも、2月と8月に大きく落ち込む「二八」現象がはっきりと表れています。

「二八(ニッパチ)の法則」というのは、全ての業種に共通するものではないことは明らかですが、そんな減少になる理由としていくつか挙げられています。

・年二回のボーナスでお中元・お歳暮やバーゲンセールでまとめ買いをした反動が翌月の2月と8月に反動として現れる。

・2月は12月から1月まで出費のかさむ行事(クリスマス・正月・忘年会・新年会等)があり、その反動として2月は出費を抑えようとする。

・季節的に2月は寒く、8月は暑くてお客さまの購買意欲が下がる。

・3月、4月は何かとお金がかかるので、2月は余計な出費を抑える。

・8月はお盆や長期の休暇で旅行などに出かけてしまい、物を買わない。

・そもそも2月は営業日数がすくなく、8月はお盆休みの影響で実質の営業日数が少ない。

 でも、これらの理由は結局のところ言い訳っぽく感じてしまいます。確かに今年はコロナ禍ということもあって来店客数が少ないのですが、そもそも「それでも行きたい店なのか?」ってことだと思うのです。結局は魅力的な店作りができていないことを、「二八(ニッパチ)の法則」だからといって現実を見ていないだけなのかもしれません。

 「二八(ニッパチ)の法則」に似た言葉に、マーケティングでは「2対8の法則」という言葉があります。2016年5月のブログでも取り上げましたが、これは、イタリアの経済学者・社会学者であるヴィルフレド・パレート発表したもので、「社会全体の所得の多くは一部の高額所得者が占めているが、それは国や時代の制度の問題ではなく、一種の社会的自然現象である」と主張しました。この考え方は、所得配分や経済においてだけでなく、マーケティングなど様々な分野に当てはまるとされており、「全顧客の上位20%の顧客が売上げの80%を占める。」とまで言われていることを意味しています。

全ての顧客を平等に扱うのではなく、2割の優良顧客を差別化することで8割の売上が維持でき、高い費用対効果を追求できるというのは難しい課題ですが、私としては、定番商品に飽き足らない一部の方のために、たとえ売りにくい特徴的なコーヒー豆でも、定期的に入れ替えていこうというのが、まめ蔵の変わらない方針なのです。

 

あかん!法則って言葉を使おうと思ったけど繋がらないワ!