祖父江のイチョウ

 紅葉のシーズンになりました。昨年は12月初めに、各務原市の「学びの森」にある「冬ソナストリート」と呼ばれているイチョウ並木を見に行きました。今回は、以前から行きたかった、1万本を超すイチョウの木が植えられている祖父江町に出かけてきました。 

 愛知県稲沢市祖父江町は、木曽三川がもたらした肥沃な大地に恵まれた江戸時代から続く銀杏の産地です。もともとは江戸時代に、耐火性のあるイチョウの木を防災や防風のために屋敷周りに植えたのが始まりとされています。銀杏の栽培が始まったのは今から100年ほど前で、屋敷周辺のイチョウの木になる銀杏を名古屋で売ったところ、非常に高値で売れたことから、集落全体に銀杏の栽培が普及したそうです。そのため祖父江銀杏は、別名「屋敷ぎんなん」とも言われています。 

 町内にはその当時に接ぎ木された樹齢100年以上の大木が多く存在し、11月下旬には町中が黄葉したイチョウの木で黄金色に染まり、毎年「そぶえイチョウ黄葉まつり」が11月下旬に行われますが、今年はコロナ禍で中止となりました。そんな訳で、ちょっと早めにイチョウ並木の街並みを散策することにしました。 

 名鉄山崎駅の周りを散策すると、収穫期を迎えたイチョウの木が沢山あります。ブルーシートが敷かれた先には銀杏の実が落ちており、特有の臭いはしなかったものの、ご近所な方はこの臭いに悩まされる人もいるのではないかと思ってしまいます。まだまだ緑の葉の多いイチョウの木は、各務原市で見た背の高いイチョウの木は少なく、横に広がったイチョウの木が目立ちます。 

これは、イチョウの樹形が雄株と雌株で違うためで、雄株は上に高く伸びようとする樹形で、雌株は枝を横に広げようとする樹形なのです。銀杏を栽培する地域ですから、当然、雌株が多いのでしょうね。祖父江町には、金兵衛、久寿(久治)、栄神(栄信)、藤九郎、長瀬、喜平、嶺南など様々な品種があるようですが、素人の私にはまるで見分けがつきません。 

そして、山崎駅から少し歩くと「イチョウ寺」の異名をもつ「祐専寺」(ゆうせんじ)に着きます。このお寺に植えられているイチョウの巨木は「祐専寺イチョウ」の原木で、樹高20m、樹齢はなんと約300年と書かれていました。稲沢市の天然記念物に指定されており、山崎地区に植えられているイチョウの多くが、この木から接木したそうですから、祖父江のイチョウを象徴すると言える樹木です。 

 イチョウは生きている化石といわれ、その起源は今から25千万年前の古生代末2畳紀から中生代3畳紀にさかのぼり、中生代のジュラ紀から白亜紀にかけて最も繁栄した植物の一種だとか、そのイチョウが日本に渡来した時期ははっきりしませんが、中国から仏教の伝来とともに導入されたという事が定説となっています。そんなイチョウの木は街路樹として全国に植えられており、一般道の街路樹の中で一番多く植えられていると言います。 

 そんなことを考えていると小腹が空いたので、祖父江のお菓子所「花乃屋」を覗き、銀杏尽くしの銘菓、銀杏ういろ、大銀杏、祖父江のぎんなんパイパイ、銀杏まんじゅうを購入し、青空のもとで一口いただいたしだいです。もちろん家族のお土産分も購入して。黄色く色付いたイチョウは楽しめませんでしたが、美味しイチョウは楽しんだ定休日です。