拙い絵手紙

 人は自分の進んでいる道に迷ったり、自信がなくなってしまうと、ついつい人と比べてしまいがちです。そして、「あの人より前だから、いや少し後ろだから」とか、「ちょっと高い場所にいるから、でも、思ったより低いかも」などと、自分を納得させたり、さらに奮い立たせたり、安心したり、不安になったりするものです。でも、本当は自分の進む道と他の人が進む道とは違うはずなのに、他人と比べることに一喜一憂してしまいます。 

 私がそんな矛盾に気付いたのは40歳を過ぎた頃でした。それ以降は「比べるのは 昨日の自分と 今日の自分と 明日の自分」を常に意識し、自分に問いかける日々が続いています。だから、他人と比べるときは、自分の進むべき道が考えている方向で間違いがないかを確認するときであり、けっして自分が上だとか下だとか、前なのか後ろだとかを確かめるためではありません。大切なのは、自分が進もうとしている道が見えているかどうかであって、他人の道と比べることではないのです。 

 時々、同業他社の店を覗くことがあります。それは自分の店と比べることが目的ではなく、自分以外の店や人など全てが学ぶ場所だと考えているからです。特定の人を師匠や先生として師事したこともないので、手探りで、実際に自分の目や体験で確かめながら進んでいます。不安ではありますが、自分の進むべき道は自分で決断しながら進むしかないのです。 

 昨日、新しい道へスタートする方へ、拙い絵手紙を一枚手渡しました。そこには、「比べるのは 昨日の自分と 今日の自分と 明日の自分」と書きました。どこまで私の思いが伝わったか分かりませんが、その方が自分自身に問いかけながら、自分の進むべき道をゆっくりと確実に歩まれることを願っています。遠方へ旅立つため、再び会うことはないと思いますが、コーヒーを飲んだ時に「まめ蔵」のことを思い出してくれるかな?