営業許可とテイクアウト

 毎年4月または5月には、東濃保健所と多治見食品衛生協会による食品衛生責任者再講習会が開催されていますが、今年は新型コロナウイルスの影響により東濃保健所はてんてこまいのうえ、例年のような200名を超える受講者が公民館等に集まることも出来ず、今年はどうなるんだろうかと思っていました。 

 最近になって、多治見食品衛生協会の地域担当の方から、検便と講習会を別々に行い、講習会を広い会場に変更して実施するそうで、内容も簡略化されると聞きます。とりあえずは、形式的ではあるものの指導を行ったということになるのでしょう。これも、コロナ渦という特別な環境によるものです。 

 連絡をいただいた際にいただいた書面の中には、多治見食品衛生協会発行の「多治見食協速報」があり、記事の中に「テイクアウトをはじめるぞ!!その前に営業許可は大丈夫ですか?」という内容がありました。コロナ禍で多くの飲食店がテイクアウトを始めていることもあり、その際に、「テイクアウトを始める時に、飲食店の営業許可証を持っていれば新たな資格を取る必要はありません。営業許可証を得たキッチンで料理を作り、それを販売することは問題ないようです。」といった情報を多く目にしてきました。けれど、少しばかり内容が違うようです。 

 記事によれば、食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業には飲食店営業許可が必要で、営業許可の種目として、「一般食堂」、「仕出し屋」などがあり、それぞれ想定するテイクアウトサービスの形態が異なります。 

一般的に飲食店とは、お店で食べることが前提で営業許可がおりています。つまり「お客さんが入店 → テーブルについてご注文 → 調理、サーブして → お客さんがいただく」という流れが基本です。また、「出前(注文を受けて調理して届ける)」ことや「来店したお客さんが店外で食べることを告げてテイクアウトする」ところまで飲食店営業許可の範囲内となるため、基本的には新たな手続きは必要ないのです。つまり、お客さんの注文に応じて温かい料理を温かいまま客先へ配達することは出来ます。※そば屋の出前、デリバリーピザ、宅配すし屋 

しかし、お客さんの注文に応じ食品を注文者のところに持ち込む営業となる、仕出し屋、給食センター、ケータリング等は「仕出」、お客さんの注文に応じてその都度店頭で販売したり、注文のあるなしに関係なく食品を調理し販売する場合は「弁当」の業務種目の追加が必要となるということです。どうやら、飲食店のテイクアウトと「仕出」や「弁当」の違いは「温かい料理を温かいまま客先へ」がキーワードのようです。 

県のホームページには、業種種目の追加、変更の欄に、「新たに弁当、仕出し等を始める飲食店営業の方は、業種細目の追加が必要です。放冷設備が必要です。(図面にて確認します。)弁当、仕出し等を提供する行為は、店内での飲食に比べて調理後から喫食までの時間が長くなることから、細菌性食中毒への対策がより一層重要となります。」とあるように、食中毒の原因となる細菌発生に大きな影響のある温度管理が問題なのです。 

 一般的な飲食店が、注文を受けてから調理するのではなく、大量に作り置きして販売する場合には、業種種目の追加の申請が必要のようですが、新型コロナウイルスによって瀕死の状態にある飲食店が一時的にテイクアウトで凌いでいる状況では、保健所としても黙認してきたのかもしれません。ただ、こうして実質的に保健所が作成している食品衛生協会発行の情報誌に記事になると、今後は規制が厳しくなるのかもしれません。