桃色吐息

 梅雨明けした定休日、県内の移動で、屋外、人混みが少ない、という選択肢の中で遊びに出かけたのが、岐阜県郡上市にある「ひるがの高原スキー場」です。子供たちが小さい頃、ゲレンデ近くのペンションに泊まってスキーを楽しんだ想い出の場所でもあります。しかし、今は夏ですから、当然スキーを楽しむことは出来ません。 

 実は、2年前まで「ひるがの高原コキアパーク」として、アスレチックや秋に紅く染まるコキアを楽しむ場所でしたが、昨年から、運営会社の中部スノーアライアンスが名称を「ひるがのピクニックガーデン」として、標高1千㍍にあるゲレンデ山頂の1万平方㍍の敷地に4万株のペチュニア「桃色吐息」が植えられているのです。 

 「桃色吐息」というのはペチュニアを品種改良したもので、南房総出身の園芸家 杉井明美さんと千葉大学との共同開発で生まれた品種です。そのため、千葉県にあるマザー牧場では既に2014年に植えられ、多くの観光客を楽しませてきました。私としては、1984年に発売された、高橋真梨子の10目のシングル「桃色吐息」のイメージが強すぎて、ついつい、♪♪咲かせて 咲かせて 桃色吐息 あなたに 抱かれて こぼれる華になる♪♪といったフレーズが出ちゃいます。 

 「桃色吐息」なんて名前を付けた人も、たぶん年代的には60代ではないかと思われますが、何と妖艶なネーミングにしたものか?「桃色」とは、桃の花の色、つまりは薄い赤色、ピンク色のことです。転じて、男女の間の色情(しきじょう)を表すこともあります。「吐息」とは、ふと気が緩んだときやがっかりしたときに思わず出てしまう息のことです。つまり、溜め息(ためいき)のことですね。そんな、男女間のやり取りを知ってか知らずか、カップルで訪れた男女がリフトで登るのを見ながら、ネーミングの由来に疑問に思っておりました。 

 リフトで頂上に着いてみると、ピクニックガーデンと呼ばれる場所からは「桃色吐息」ではなく、吐息だけが出てしまう寂しい光景です。ホーページに「現在の様子」として出された「桃色」は微かな状態なので、周辺を歩いてみると確かに下からの絵面は桃色いっぱいであり、何だか騙された気持ちになります。「まあ現実はこんなものか!」と諦めながらも、高原の涼しい風に当って避暑地気分を味わうのでした。