招き猫

 瀬戸市美術館で行われている、特別展『平成から令和へ 日本招き猫大賞の20年』(83日~929日)を見に行きました。

 この特別展は、瀬戸市制施行90周年と、昨年20回を迎えた「にっぽん招き猫100人展」を記念し行われているもので、江戸末期に誕生した日本独特の縁起物・招き猫をテーマに、さまざまなジャンルのアーティストが新しい招き猫を創作する全国最大の創作招き猫が毎年9月下旬に展示されているのです。

  今回は、過去大賞作品のパネル展示をはじめ、大賞受賞作家18名の代表作と新作である「令和の創作招き猫」が展示され、作家の自由な発想から創られる、新時代にふさわしい招き猫たちを鑑賞することができます。

 ところで、招き猫の三大産地と言われる産地は、常滑、瀬戸、石川県南部の九谷といわれ、常滑と瀬戸で約8割のシェアを占めているそうです。生産量から言えば常滑が一番多く、市内のいたるところに巨大な招き猫のオブジェが設置されています。

 ですから、「なぜ瀬戸で?」と疑問が湧きますが、その常滑は、瀬戸の50年ほど後に招き猫づくりが広まったそうです。昭和20年代、常滑の主要産業だった土管が不況になってきた中で、招き猫の新デザインを考案し量産したところ、そのデフォルメされた姿が人気になったということです。

 それまで願掛けやお守りとしての縁起物だった招き猫が、高度経済成長とともに商売繁盛を願うアイテムとして日本中に広まり、現代まで招き猫の定番スタイルになったという背景があるのです。

 実際、常滑と瀬戸、そして九谷の招き猫には違いがあるそうです。

■常滑

 常滑の招き猫は陶器です。常滑の土は赤いので、最初に全体を白く釉薬を塗って、その上から絵付けをしていきます。そして、それまで首についていた鈴が、小判に変化したり、小判を持った今では招き猫の定番スタイルが特徴です。

■瀬戸

 瀬戸の招き猫の多くは磁器です。高温で焼成した物を、招き猫に欠かせない赤や金色の絵の具で絵付けし、750℃でもう一回焼いています。さらに、色数が多いものは焼く回数が増えていきます。首の鈴が複数あったり、前掛けにはヒダがあるのも特徴です。

■九谷

 九谷焼の招き猫には顔にまで模様が入っています。オリエンタルな雰囲気が受けて、作られたものはほとんど輸出されたために、あまり国内で見かけることがありません。他と違って耳は横向きで鈴も横についているのが特徴です。

 かつて瀬戸は、人形や鳥など精密に表現したセト・ノベルティーと呼ばれる海外輸出向けの置物を多く生産していました。そのセト・ノベルティー生産の原点ともいえるもののひとつに招き猫があります。明治30年代後半以来約100年間、「古瀬戸(ふるせと)タイプ」からファンシーな招き猫まで、時代の要請に合わせ、さまざまな招き猫を作りつづけてきました。

 今回、まめ蔵も5年目を迎えており、少しずつお客様が増えていくように、招き猫のご利益に授かろうと思って出かけたのです。ただ、少なくても困るし多すぎても対応できないので、丁度良い具合に招き入れて欲しいという、わがままを聞き入れてくれそうな招き猫は無く、化け猫や道楽に興じている猫が多くて、役に立ちそうにありません。結局、欲を出した私が瀬戸市美術館へ招き猫効果で引き寄せられただけかもしれません。