夏のお勉強

 暑過ぎてお客様の来店が減った時間帯、「子ども珈琲電話相談」の影響を受け、「夏休みの宿題」よろしく、「夏のお勉強」をしてみようと、改めて『コーヒー豆を追いかけて 地球が抱える問題が熱帯林で見えてくる』(著:原田 一宏)を読んでみました。

 この本は「くもん出版」の書籍であり、いわゆる「くもん いくもん!」でお馴染みの、株式会社公文教育研究会の出版部として設立されたものですから、当然のごとく児童書なのです。ただ、対象年齢は10歳からとなっていますので、プラス50歳の私でも充分学習本としての役割を担ってくれます。

 出版社の紹介文では、「コーヒー豆は、熱帯や亜熱帯で広く栽培されています。そして世界じゅうに輸出され、コーヒーとして飲まれたり、スイーツなどに使われたりしています。だからコーヒー豆のことを調べると、地球上のさまざまな問題が見えてきます。コーヒー豆の栽培で、熱帯林の木がたくさん切られていないか?森がへり、野生動物と人間の衝突が起きていないか?地球温暖化に影響をおよぼしていないか?コーヒー豆を栽培する農民たちの暮らしはどんなふうか?世界じゅうで飲まれているから、農民の生活は安定している?熱帯林に何度も足を運び、森のようすや、そこに生きる人たちの暮らしを研究してきた著者が、調査や研究のようすを紹介しながらわかりやすく話します。」とあるように、若干掘り下げた内容となっているため、10歳の児童には難しいのかもしれません。

 そうとは言っても、児童書ですから易しい言葉使いで丁寧に説明されていますので、一般的な珈琲本に見られるような、難しい事をさらりと流したり、もったいぶって語られるようなことがないため、カップのコーヒーしか見ていない人には、是非読んでもらいたい本でもあります。

 こうしたコーヒー産地に関連する本を読むと、コーヒーの生産に従事する人々の生活が豊かになれば、いずれはコーヒーは作られなくなるのではないかと危惧してしまいます。地元の窯業ですら、「子供には継がせたくない。」とか、「都会から呼び寄せて継がせるんじゃなかった。」という話を聞くと、小規模なコーヒー農家にとっては豊かさを享受することはできないように思えてなりません。

 大規模なコーヒー農園であっても、貧しい移民や出稼ぎ労働者に収穫作業を頼る現状を見ると、中国やベトナムからの研修生という名の出稼ぎ労働者に頼る地場産業と、産業は違えども課題に類似点が多いように感じます。 

 豊かさとは何なのか?将来のコーヒーはどうなっていくのか?一冊の児童書を読みながら、いい大人になった私の「夏のお勉強」はまだまだ続きそうです。