高千穂あまてらす鉄道

 高千穂には海外からの観光客も多く訪れ、真名井の滝のある高千穂峡には、貸しボート屋のある駐車場が直ぐに満車になったり、長い待ち時間を我慢しなければなりません。ところが、私たちは幸いにも雨の後の僅かな晴れ間で、終了時間近くということもあってか、スムーズに貸しボートにも乗ることが出来ました。

 もう一つの人気スポットである「高千穂あまてらす鉄道」も、本来なら事前予約が取れないこともあって待ち時間があるのですが、こちらも待ち時間なく乗ることが出来、記憶に残る観光スポットの一つになっています。 

 その「高千穂あまてらす鉄道」は、国鉄時代の高千穂線が廃止対象路線となり、1989年に第三セクターとして運行を引き継ぎ、住民の足として活躍するも赤字続きで存続の危機を迎えます。そこへ、2005年の台風14号によって五ヶ瀬川氾濫し、高千穂鉄道は被害総額26億円という現実の前に廃線を余儀なくされました。旧国鉄時代から70年間続いた鉄道の幕が下りたのです。ところが、廃線後の2008年にある会社が借り受け立ち上がります。それが、「高千穂あまてらす鉄道」です。

 社長の高山文彦氏(本名:工藤雅康)は、高千穂町出身の作家でもあります。生い茂った草刈りからスタートし、手押しの木製トロッコを押す形で営業を開始。その後、エンジン付きで座席数を増やしたりし、現在では30人乗りのグランド・スーパーカートを導入しています。閑散としたホームは人で溢れ、平成27年度には黒字に転換し、平成29年度には来場者は4万人を超える人気鉄道になりました。

 なぜ、こんなにも人々を魅了する鉄道になったのかは、実際に乗車体験すれば分かります。旧高千穂鉄道の車両や、営業開始時の古いトロッコの見学ができたり、鉄道職員のユニホームを着ての記念撮影、乗務員の流暢なアナウンスガイド、トンネル内の暗がりを利用したイルミネーションの投影、鉄橋の上でのシャボン玉演出など、乗車時間30分を飽きさせることなく楽しませてくれます。

 なによりも、乗務員やスタッフが「高千穂あまてらす鉄道」を愛し、楽しみながら工夫している様子が垣間見えることです。「線路の上を歩いて見学してください!」、普通ならありえない言葉に、フレンドリーという表現では伝えきれない親近感を持ちました。笑顔がいっぱいの「高千穂あまてらす鉄道」には、枕木交換や鉄橋の塗装塗り替え費用など課題もありますが、機会があれば又訪れてみたい場所です。少しでも見習いたいと思ったしだいです。