彼のアルマス

 連日の異常な暑さから今日は一変して雨となり、アイスコーヒーの仕込みに悩んでいたところ、長野県売木村に移住した旧友が訪ねてくれました。5年前に私と同じく早期退職し、長野県南部の過疎の村である売木村に移り始め、山を開墾しながら今では小さな山小屋(本人が言うよりも立派な住宅)を建てました。

 彼が移り始めてから毎年夏に妻と共に訪問し、山が少しずつ整備されていく様子を見ながら、今後どのような方向性を持って進むのか見守ってきました。切り出した山の木を利用して木工品を作り始め、各地のクラフト展へ出展しながら試行錯誤したようで、今回、初めて名刺をもらったのです。

 名刺には「あとりえ あるます atelir  Harmas 」という屋号で、「ほっ、ヒノキの枝人形」とあり、インスタグラムも始めたようです。インスタの画像には、かわいいマリオネットが何種類も映っており、本人とのギャップに思わず笑みがこぼれてしまいます。

 名刺の裏には、「ジャン=アンリ・ファーブルさんが終の棲家とした土地をアルマスHarmas (荒れ地)と呼び、ここで『昆虫記』を書きました。ファーブルさんと荒れ地が大好きな伊藤です。」とあります。確かに長野県の外れの過疎地である売木村の彼の住む場所は、ある意味で荒れ地かもしれませんが、荒れ地と呼ぶには綺麗に整備されています。

 ファーブルのアルマスHarmasは、フランスのプロヴァンス地方にある小さな町オランジュOrange)近郊、セリニャン(Serignan)村のはずれにあります。フランス語で「荒地」を意味する俗語ですが、ファーブルは手入れをしていない自宅の庭をこのように呼んだことから、現在ではファーブルの敷地全体をこのように呼んでいます。

 この地でファーブルは、1879年、55歳の時から91歳で亡くなるまでの36年間をここで過ごしており、『昆虫記』に記述した昆虫の観察の多くはここで行われました。ファーブルの死後、1921年に国によって買い上げられ、国立自然史博物館の所有となって、ファーブルの遺品などを展示する博物館として公開されています。

 私の旧友が終の棲家として選んだ売木村で、ヒノキの枝人形とともに具体的な夢をどのような形にするのか、ファーブルとは違うアルマスの様子を楽しみながら、夏には妻と訪れてみようと思うのでした。彼のアルマスに期待して。

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コメント: 3
  • #1

    あとりえ あるます 伊藤 (水曜日, 29 5月 2019 12:52)

    久し振りだったねぇ~�。
    いろいろ説明してくれてありがとう✨。本人らしい作品だと思ってるんだけどなぁ???。まだまだスペースも作品も夢の途中だけれど、また現地と実物を見に来てね�。

  • #2

    まめ蔵 (水曜日, 29 5月 2019 16:49)

    自分のことは自分が一番知っているつもりでも、他の人から見ると異なって見えるものです。だから面白いのであって、意外性という感動も生まれたりします。暑くなったら又二人で遊びに行きます!

  • #3

    あとりえ あるます 伊藤 (水曜日, 29 5月 2019 19:28)

    目付きが悪いとはよく言われてました�。けど悟ったようなこと言ってると、年寄りになっちゃうよ�年寄りだけどね�。待ってるよ~~!✨�。