ブラックホール

 『あらゆる物質をのみ込む巨大ブラックホールの撮影に、国立天文台などの国際研究チームが世界で初めて成功し、10日発表した。世界6カ所の望遠鏡で同時に観測して解像度を飛躍的に高め、真っ黒な穴を捉えた。ブラックホールの存在を直接裏付けたことになり、銀河の成り立ちの解明につながる』こんなニュースが飛び込んできました。

 このニュースを聞いた時、高校生の時に読んでいた、ブルーバックスのアインシュタイン相対性理論を思い出しました。当時(今でも)、高校生の私には理解不能な内容ではあったものの、星新一を愛読していたこともあって、空想の世界は広がるばかりであり、何を考えてか、反射望遠鏡を自作しはじめます。

 学校から帰宅すると夜な夜な自室に籠り、ガラスの円盤を凹ませるために研磨剤を使ってゴリゴリします。この頃、ニュートン式の反射望遠鏡は、屈折式よりも大きな口径を安価に実現できるため、自作するための雑誌やキットが売られていたのです。そうなると、夜空を見る事よりも、完成した望遠鏡の姿ばかり想像していました。

 研磨剤の粗さを80番、150番、320番、1000番、2000番の順に切り替て研磨を続けても、まだスリガラスの状態です。コールタールと松ヤニを火にかけて溶かしたものを盤ガラスの上に流し込み、それに網目状の溝を作ったら、酸化セリウムという非常に細かい研磨剤をつけ、ミラーが透明になるまで磨くのです。

 そんな感じで素人が作った反射望遠鏡でしたが、初めて月を見た時の感想は「???」意外と感動は生まれません。作ったことに満足してしまい、月の輪郭同様に目的がぼやけていたのですから。

 その後、19817月に雑誌ニュートンが創刊されると、わかりやすい文章と、視覚に訴える鮮明なイラストに魅了され、しばらくの期間は毎回購入していました。しかし、社会人になって様々な誘惑に惑わされ、徐々にそうした空想の世界に浸ることが無くなっていきます。

 今、珈琲屋をはじめてからは、その頃の経験を思い出したかのように、コーヒーに関しては、何でも実際に見て確かめたいと出かけてみたり、試しにやってみようという気持ちが湧いてきます。こんな気持ちが長く続くよう、お金や名声などといった勘違いをするブラックホールに吸い込まれないよう、コーヒーだけを見つめていきたいのです。