つるし飾りと 3.11

 土岐市には、ニフティ温泉年間ランキング2018岐阜県第1位のとなった、「土岐よりみち温泉」という日帰り入浴施設がありますが、他にも市内には「柿野温泉」、「曽木温泉」、そして地元である下石町にも「山神温泉」があります。いずれも源泉温度は28度程の冷泉であるものの、泉質は「土岐よりみち温泉」がアルカリ性単純温泉で、それ以外はアカリ性単純弱放射能温泉です。

 地元の山神温泉は土岐市にある歴史のある湯治場です。700年ほど前の鎌倉時代、この地に逃げ込んだ傷ついた落武者が気を失ってしまった時に夢枕に薬師如来が現れ、谷川で傷を洗えというお告げ通りに体を洗うと、不思議なことにたちまち傷が治ってしまったといいます。それ以来ここは地元の大切な湯治場となり、それが「山神温泉」湯乃元館の由来なんだとか。

 しかし、「地元あるある」で、この温泉に入浴したのは過去数回しかありません。地元では料理旅館という感覚で、法事や町内での宴会で利用することは多くあるものの、近すぎて宿泊することが無いからです。過去に入浴した際も宴会後だったと思います。温泉の泉質がラジウム温泉ということもあって、アトピー・湿疹・皮膚病・リウマチ・神経病などに効能があるうえ、肌がスベスベになる良い温泉であるにも関わらず、一般的なアルカリ性単純温泉の「土岐よりみち温泉」についつい出かけてしまいがちです。

 その「山神温泉」で、館内スペースを使って『つるし飾り展』が行われていました。旧暦で雛祭りを行う土地柄らしく、3月2日から4月3日まで館内を色とりどりに飾られている「つるし飾り」を見るのもいいかもしれません。美味しい料理を食べた後に、体の芯まで温まった湯上りに眺めたいものです。(あくまで希望)

 ところで、地元の温泉の多くがアカリ性単純弱放射能温泉です。この「放射能温泉」という言葉を使わなくなった時期がありました。それは、東日本大震災による津波によって、東京電力福島第一原子力発電所が破壊され、大量の放射性物質の漏洩を伴う重大な原子力事故が起きた後の事です。

 目に見えない放射性物質に怯える映像がテレビで毎日流れ、小型のガイガーカウンターがネットでも購入できるようになり、放射線量の数字が恐怖心を掻き立てました。都心に住む外国人駐在員が日本から出国し、なかには都心から地方に移り住む人もいました。そのため、今まで健康に良いとされていた温泉にまでも影響がでたのです。

 そんな風評被害的なものはお湯に流せるのでしょうが、福島では遅々と進まない原子力発電所の事故処理があります。3月11日を再び迎える頃になり、「つるし飾り」が子供たちの幸せを願って作られているように、東北の人たちの復興を願わずにはいられません。