悪魔?

 コンビニへ立ち寄ると、おにぎりのコーナーで「悪魔のおにぎり」という商品が目に留まりました。普段、コンビニでおにぎりを買うことがなく、注意して見ていたわけではないので気づきませんでしたが、ローソンで昨年の10月から発売された商品のようです。キャッチフレーズの“やみつき注意、悪魔のような誘惑よろしく、その誘惑に惹かれて買ってしまいました。

 その「悪魔のおにぎり」の正体はというと、白だしで炊いたご飯に、「天かす」「青のり」「天つゆ」を混ぜ込んで握ったおにぎりで、「おいしすぎてついつい食べ過ぎてしまう」ことから「悪魔のおにぎり」と名付けられたようです。でも、確かに美味しいものの、悪魔のささやきは一度きりに終わりそうです。悪魔という美味しさとは逆のイメージを感じさせるキャッチフレーズに、まんまとやられたと同時に、ネーミングが購買層に与える影響力が大きいことに納得させられます。

 コーヒーも「悪魔の飲み物」と言われた時代がありました。アラビア半島で広く飲まれるようになったコーヒーが、ヨーロッパへと伝わったのは1600年ごろのことです。しかし、イスラムの国からやってきたこの黒い飲み物のことを、「悪魔の飲み物」、「コーヒーを飲むと悪魔にとり憑かれてしまう」と恐がる人たちもいました。イスラム教徒の飲み物はキリスト教徒にとっては異端の飲み物だったのでしょう。

 そんな中、コーヒーを一口飲んだ当時のローマ教皇クレメンス8世は「こんなおいしいものをキリスト教徒が飲まないのはもったいない」と、コーヒーに洗礼を施し、キリスト教徒の飲み物として認めたのでした。その後コーヒーがヨーロッパ全土に広まり、さらには世界へと広まった訳ですから、ある意味、悪魔の力が働いたのかもしれません。 

 悪魔と言えば、日本では一般に「タレーラン」と略される、フランスの政治家シャルル=モーリス・ド・タレーラン=ペリゴールは、「よいコーヒーとは、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、愛のように甘い。」と言ったと、いろいろな場面で引用されることがあります。

 また、トルコの諺には「コーヒーは地獄のように黒く、死のように濃く、恋のように甘くなければならない。」 なんていうのもあったりと、悪魔や地獄を連想させるものの、いずれも、愛や恋のように甘いって言っているのも分かる気がします。

 さらに、オレンジの皮をりんごのように剥き、エスプレッソ・コーヒーの上に長く垂らし、オレンジリキュールを剥いた皮の上から注いで、コーヒーカップに落ちる際に火をつけ炎があがる、別名「悪魔のコーヒー」という飲み物もあります。

 おにぎりやコーヒーに悪魔と言った刺激的な形容がつくと、ついつい誘惑に駆られてしまいますが、出来れば悪魔より天使の方がいいですね。