KAKO 花車本店へ

 先月お客様から、名古屋市天白区にある寄鷺館(きりょうかん)のコーヒー豆をいただき、1978年11月から自家焙煎を開始した大先輩のコーヒーを楽しんだ後、今日は寄鷺館よりも更に早くから自家焙煎を始めたという、KAKO 花車本店に出かけてきました。ホームページには「名古屋で初めて自家焙煎コーヒーを始めたのはこの花車本店です。」とあるように、1972年に開店、名古屋で初めて自家焙煎コーヒーを導入した歴史あるお店のようです。
 お店の場所は名古屋駅の東「柳橋」交差点から北へ約200mほどの場所にひっそりと佇む場所にあり、道路を挟んだ向こうには柳橋商店街の看板が見えます。今はほとんど使われなくなった「花車」というこのあたりの旧地名を冠し、昔ながらの路地裏の雰囲気を漂わせる場所にある喫茶店で、レトロ感が漂う趣のある店内は思った以上に狭く、カウンターとテーブル席が2つだけの小さなお店です。
 しかし、その店内に入ると既に満席状態で、一人で来店した私は運よくカウンターに座れましたが、直ぐに外には何人もの順番待ちの列ができます。なんでこんなレトロ感満載の店が流行るのかは直ぐに分かりました。私の隣にお客さんに出されたトーストには、インスタ映えする盛り付けがなされていたからです。私は朝食を食べたのにも関わらず、思わず「ブレンドとこれと同じものを!」と注文してしまいました。
 このトーストはシャンティールージュスペシャルというそうで、バタートーストに、小倉餡、コンフィチュール(ジャム)、生クリームをトッピングしたもので、食べやすいよう4つに切り分けられており、それぞれ異なるコンフィチュールがトッピングされています。でも、食べてみると生クリームではなくホイップクリームで、それも泡立て過ぎのものを冷蔵庫で冷やして固くなっています。見た目以上に甘く、注文ミスを後悔してしまいました。だけど、このカラフルでボリューム感のあるトーストが若者にウケるんでしょうね。来店者の多くは若者ばかりで、ほとんど人が注文していました。
 少し苦目のコーヒーを飲みながら、シャンティールージュスペシャルとやらを待つ間に店内を眺めていると、接客とレジを行う若い女性、作り置きしたコーヒーを大きなポットから継ぎ足し、温めてカップに注ぐ店主の奥さんと思われる人、その店主といえば、ひたすらシャンティールージュスペシャルを作り続けるといった光景で、何だか延々と続きそうに思えるほど来店者が並びます。
 店主は私と似たような頭であるものの、そこそこの年齢だと思われ、随分繁盛しているのに楽しそうに見えなかったこともあって、「自分には無理だな。」って思いました。楽しむことが優先順位の第一で、カウンターに座るお客様とも会話もできない雰囲気に、都会の繁盛店の現実を見たようで、何だか疲れて帰ってきたのでした。