藩士の珈琲を楽しむ

 日曜日から三日間臨時休業にし、夫婦と次女の三人で青森県まで旅行に行きました。主に八甲田山から右の南部地方を巡ったのですが、最終日に弘前市へ向かい、弘前藩士たちが薬として飲んでいた珈琲を再現し、「藩士の珈琲」として提供している成田専蔵珈琲店へ立ち寄ったのです。弘前藩士が飲んでいた頃と随分品質の良いコーヒーであるうえに、おしゃれな店内で飲む環境に違和感があるものの、弘前の地で楽しんでみるのでした。

 

 「藩士の珈琲」を注文すると、先ず運ばれてきたのが、すり鉢、すりこぎ棒、珈琲豆(スクールブレンド24g程)のセットです。見本の粉と同じようになるよう、薫りを楽しみながら、すりこぎ棒で珈琲豆を粉砕します。すりこぎ棒も陶器製で粉砕しやすいのですが、均一にするのには結構力が必要です。

 

 

 見本の粉と同じような中挽きになったら、粉砕した粉を木製スプーンで袋に詰めます。詰め終わったら店のスタッフを呼びます。

 

 

 店のスタッフが珈琲袋を土瓶に入れてお湯を注いでくれるので、蒸らしの時間である1分間を砂時計の黄色い砂が落ちるのを見ながらじっと待ちます。

 

 

 蒸らしが終わったら土瓶のふたを取り、砂時計をセットして袋をティーバッグをように上下させて、1分間振り出します。

 

 

 トングを使って袋を取り出すと、ちょうど良い濃度になっているので、湯飲みに入れて飲んでみます。袋がネルより粗目の布なので、底に珈琲の粉が多く残りますが、想像以上に美味しい珈琲でした。

 

 

 飲み終わった頃、店のスタッフの方がドリップで淹れてくれた同じ豆の珈琲を出してくれます。飲み比べ用だとのこと。どちらかといえば、「藩士の珈琲」の方がマイルドで、ドリップの方はすっきりした口当たりでした。

 

 

こんな感じで楽しみながら飲んでしまっている姿に、稚内市の発行した『天明の蝦夷地から幕末の宗谷』(稚内市教育委員会:2009年)に記載されたような、幕末の壮絶な宗谷警備の中で飲まれた光景などは想像できず、なんだか申し訳ないような気分になります。でも、良い経験が出来ました。