ドラえもん展

 名古屋テレビ放送の企画により、松坂屋美術館で9月27日から11月18日までの間、「THE ドラえもん展 NAGOYA 2018」が開催されています。2002年に開催されたドラえもん展が時を経て再び行われることから、前回見ることのなかったこともあって、定休日を利用して出かけてきました。
 もっとも、森アーツセンターギャラリーで昨年、「THEドラえもん展2017」として開催されていることから、概要が分かっているだけに新鮮味に欠けるものの、今回のドラえもん展は写真撮影が原則OK(映像は除く)とあって、気になった作品を何枚か撮影してきました。
 漫画家 藤子・F・不二雄氏の手により1970年に誕生した『ドラえもん』は、漫画、テレビアニメ、映画の中でのび太やその仲間たちを優しく、ときには勇敢に助けてくれるドラえもんの姿に笑ったり、興奮したり、時には泣いたりもしたという方も多いかと思います。(私は泣けませんが)そんな思い出を持つ国内外で活躍する総勢28組のアーティストたちに、「あなたのドラえもんをつくってください。」というお願いをし、生まれた“あなたのドラえもん”と共に過ごす展示会なんだとか。
 確かに、作品の横のパネルには各アーティストたちの思いが綴られているものの、全体的にはちょっと物足りないという印象でした。だって、ドラえもんに対して非常に友好的で好印象な作品ばかりになっているのですから。誰かが言っていた「芸術は爆発だ!」というような刺激的で、批判的な作品が少なく、物分りの良過ぎるものばかりなのですから。
 全ての人に愛されるなんてありえないし、斜に構えるくらいの偏屈な人もいて良いと思ったりしました。しりあがり寿さんの「万事解決!劣化防止スプレーの巻」という作品の説明文の中には、『社会の仕組みの老朽化、人々の幼児化、色あせた理想、世界中の複雑に入り組んだ困難な問題をいとも簡単にまとめる「劣化」という言葉。そしてそれを一瞬にして解決する「劣化防止スプレー」。万能のドラえもんに託す希望と、だけどそれは有り得ないという絶望のほろ苦さを重ねたアニメ作品。』となっていましたが、世の中劣化し壊れるから、また新しいものが生まれるのであって、現状維持を望むこと自体が人々の幼児化の現れだと思ってしまいます。不完全な世界に生きているのだから。
 そういう意味では、山口晃さんの四コマ漫画では、のび太の「人生の意味って何なの?」という質問に、ドラえもんが、「意味なんてないよ。」「無いんだから勝手に決めればいいんだよ。」という気の利いたセリフや、坂本友由さんのリアルしずかちゃんがを見ると、ちょっとだけ救われた気持ちになり、秋にアートな気分になっている自分に満足するのでした。
 でも、会場を出るとキーホルダーやぬいぐるみ等のグッズ販売コーナーに群がる家族連れを見て、「何だ、やっぱり金で解決するんだ!」と覚めてしまいう自分がいました。