カフェでカフィを

 カフェとは、本来コーヒーの意味で、転じて、コーヒーなどを飲ませる飲食店を意味しており、フランス語で café、イタリア語で caffèと、日本語の平坦な発音とは随分異なるものの、コーヒーを飲む場所には変わりありません。ちょっと前には「家カフェ」なんて言葉が流行りましたが、結局、コーヒーを楽しむ場所こそがカフェということになるのでしょう。

 今回読んだ「カフェでカフィを」・「カフェでカフィを 2」 (著:ヨコイ エミ 集英社クリエイティブコミックス)は、「お茶をかこめば、どこでもいつでも、そこはカフェになる。」というわけで、様々なシチュエーションで織りなすコーヒーやお茶をめぐったショートストーリーが収録されたコミックスです。

  冒頭がヤマダカフェで始まるものの、会社の給湯室、自販機のコーヒー、野点、ファミレス、公衆トイレ、喫茶店、バスルーム、福祉会館、アパートの部屋、回転寿司店とコーヒーやお茶の登場する場面は変わり、全てに暮らしの匂いプンプンし、繋がってストーリーが展開するところが楽しい。それが2作目になると、ショートストーリーごとの繋がりが薄くなるうえ、1作目を読まないと面白みが味わえない部分もあり少し残念。でも、「そんなこともある!」って共感できるのがいい。

 私の方は一応飲食店とし営業しており、「カフェ」として様々な方が来店されます。そして、カウンター越しからは、日常の生活がうかがえるお客様の姿が見え隠れするのです。一人暮らしの老人が例年自宅にやってくるツバメが来ないと、「ツバメにも見捨てられたか?」と落ち込んだ日もあれば、数日後には「ツバメがやってきた!」と急に元気になったり、そうかと思えば「フン害だ!」と不機嫌になったりと一喜一憂する光景を見ます。

 老々介護の生活から一時の癒しの時間を求めて一杯のコーヒーを楽しむ老紳士が、奥様のご機嫌が良い時に二人で来店され、優しく接しておられる姿に妙に安堵したかた思えば、次の日には再びカウンターで愚痴をこぼされたりと、人生ままならないと思ってしまいます。

 新入社員として近くの会社に就職した若者が、新しい仕事を任されるようになって喜んでいたけど残業つづき、休日返上で仕事をして愚痴をこぼした翌週、「海外出張になりました。」国際免許証の話や滞在中の生活などを嬉しそうに話してくれます。とってもいい青年なのに彼女はいません。きっと彼女ができたら連れてくるんだろうなと、首を長くして待っています。

 ご婦人方の話題には踏み込めません。ドロドロとした空気感が漂い、離れた場所から漏れる言葉に震えることもあるからです。

 そんな年齢も性別も生活圏も異なる人たちも、カウンターに座って会話をしていると、想像以上に関わりを持っていたり、繋がって生きていることを実感することがあります。よく「世間は狭いな~。」なんて言いますが、カウンター越しに楽しい経験ができるのです。

 ある人が、「私にとって‘カフィ’は糾(あざな)える縄の如(ごと)し。」なんて言ってたけど、「私にとって‘カフェ’は糾(あざな)える縄の如(ごと)し。」なのです。ぜひ、まめ蔵にて、「カフェでカフィを」ですね。(コマーシャルか?)

 ちなみに、作品に登場する「豆蔵」は、「まめ蔵」と名前が類似していますが、何ら関係がございません。いや、マスターの頭皮は類似していました。

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コメント: 2
  • #1

    帰山人 (金曜日, 07 9月 2018 22:25)

    確かに店名は似ているけれども、漫画に登場する名東区の豆蔵マスターは実物通りなわけで、あっちは頭皮の分が横や下にぐるんと回った感じ、土岐のマスターのは全部どっかにいっちゃた感じ、随分と雰囲気が違うと思うけど・・・

  • #2

    まめ蔵 (土曜日, 08 9月 2018 06:57)

    そこは見解の相違というものです。