幸福なんだけど

 コスタリカのカッピングセミナーに行ったこともあって、以前から気になっていた事について書いてみます。
 英国のシンクタンク、ニュー・エコノミクス財団(NEF)が2016年7月に「世界幸福度指数」の2016年版報告書を発表しました。この指数の基準となるものは、各国の平均寿命、人生の満足度、エコロジカル・フットプリントのデータを基に、「消費される環境資源量当たりに生じる人間の幸福の度合い」を評価します。さらに、平均寿命・満足度に対して各国内で生じる格差の大きさも評価基準としています。簡単に言えば、「自然環境にあまり影響を与えずに長く幸せな人生を送っているか?」ってことなんでしょう。

 そして、翌年の7月には「コスタリカの奇跡 ~積極的平和国家のつくり方~」という映画が公開されました。内容は、コスタリカが1948年に常備軍を撤廃し、1949年には憲法にも規定して、軍隊に頼らず、条約や国際法、そして国際機関との関係を強化しながら、国際的な関係性の中で独自の安全保障体制を構築していった道筋を紹介するものです。 1948年12月に軍隊廃止を宣言したホセ・フィゲーレス・フェレールの「兵士よりも多くの教師を」というスローガンを実現し、莫大な予算の軍事費の支払いから、よりよい教育や国民皆保険制度の実現のために振り分けてきたのです。

 ほぼ同時期に二つのメッセージが出されたことで、「常備軍撤廃」=「幸福」といったイメージで語られることも多く、憲法改正議論と相まって昨年あたりから映画の上映会が全国で行われているようです。しかし、コーヒーを通してコスタリカを見てきた私にとって、なんだか違和感を覚えます。平和的な国民性は理解できるものの、幸福度指数が1位であることも、ベストテンの国々を見てもランキングを作る側のメッセージ性を感じます。また、国連のランキングを見ても同様で、日本に住む国民は不幸なんでしょうか?私は幸福なんだけど。

 コスタリカは常備軍を持たないものの、非常時には軍事力を持つことができ、そのため、隣国のニカラグア軍の3倍近くの予算で準軍隊ともいえる警察組織を持ちながら、アメリカとともに非常時に備えて訓練を行っています。また、近年では麻薬の横行と治安悪化も話題になっています。

 幸福度指数の発表や映画といったメッセージを発するものに対しては、国内メディアの情報と同じように、目的を持った情報の意味を考える必要を感じます。そんなことを考えながら今日もコスタリカのコーヒーを飲んでいるのです。あなたの幸福度は54位?それとも58位?