カップ&ソーサー&Goo

 昨年10月1日、名古屋市東区葵1丁目オープンした新しい美術館である、横山美術館で開催中の「時を越え心揺さぶるカップ&ソーサー展」に行ってきました。この横山美術館は理事長である横山博一氏が1998年から個人で収集してきた明治時代以降日本で作陶し、欧米等の海外に輸出された陶磁器(里帰り品)を中心に約3,000点を後世に残す目的で設立した公益財団です。
 美術館のある名古屋市東区には瀬戸などの産地に近いという好立地から、かつて多くの陶磁器工場や貿易商社が立ち並んでいたそうです。今回の企画展「時を越え心揺さぶるカップ&ソーサー展」は、そうした明治・大正時代の技巧を凝らし多彩な装飾が施されたカップ&ソーサーが、コーヒーや紅茶などを飲む習慣がなかった人達が試行錯誤を繰り返し、当時の技術を結集させた器の数々というわけです。
 心揺さぶるカップ&ソーサーも興味があるものの、横山美術館の理事長である横山博一氏という人物にも興味が湧きます。横山氏は中古車販売情報だけに特化し、業界の先駆けとなったプロトコーポレーションの会長です。「カーといえば Goo」と言われるように、企業名よりむしろ雑誌媒体名の「Goo」の方に馴染みがあるかも知れません。

 Goo の前身の「月刊中古車通信」を 1977年 10月に名古屋で創刊していますが、横山氏は中古車業界とは全く無縁でした。サラリーマン時代に中古車の購入をした経験があり、その時に欲しい車を探すために何軒もの中古車販売店を回って、やっとのことで 1台の中古車を探し当てることができた際、「1台の中古車を探すのに何と手間がかかるのだろう。中古車を欲しいと思っているユーザーは自分と同じ思いをしているはずだ。」と痛感し、「一冊の本に中古車情報をまとめると探すのに便利ではないか、これを中古車ユーザーに提供すれば絶対にいける、間違いない。」と直感したといいます。
 その後「月刊中古車通信」は全国に広がり現在の社名に変更となりますが、リクルートが「カーセンサー」を売り出し対決することとなります。当時の プロトの売上規模は 30 億円で、リクルートは 3,000 億円といわれ、業界内では象とアリの戦いと見なされ、リクルート優勢というのが専らの予想でした。
 そんな中、プロトは1ページの広告を埋めるだけの資金や在庫を持たない、中堅・中小中古販売事業者向けに広告スペースの小口売りを行ったり、データベースを利用した販売支援のみならず、仕入れ支援にも活用できるようにし、中古車販売事業者への経営助言や指導を行うなど、単なる広告媒体に留まらない営業活動を行い、大手企業と異なる顧客視点で成功を収めています。
 そんな横山美術館の裏側を想像してみると、カップ&ソーサーを透かした向こう側に中古車が見えるのかもしれません。見えないか。でも、「カップ&ソーサー」が「カーセンサー」に聞こえなくもないか? そうそう、展示室に設けられた無料コーヒーコーナーにユニマットのコーヒーがありました。アマレロブレンドでコンビニのコーヒーよりも美味しくてグー!(Goo)でした。