カカオとコーヒー

 テレビでは1月後半からバレンタインデーのチョコレートに関する番組が流れていますが、チョコレートの原材料であるカカオはコーヒーと共通する部分が多いのです。

 はるか昔、マヤ文明の時代にはカカオは通貨として使用されたと言われるくらい貴重なものでした。スペインをはじめとするヨーロッパ諸国が中央アメリカや南アメリカを植民地支配していく過程で、ヨーロッパにもカカオが伝わり、嗜好品として人気となったカカオはヨーロッパの他の植民地でもカカオが栽培されました。

  カカオ生産国の上位6か国は、コートジボアール、インドネシア、ガーナ、ナイジェリア、カメルーン、ブラジルとなっており、アフリカの国々が多く含まれているのは、こうした植民地支配によってアフリカで栽培された歴史があるからです。そして、これらの国ではコーヒーも栽培され、2016年のFAOFood and Agriculture Organizationの資料では、生産量順位はコートジボアール:15位、インドネシア:4位、ガーナ:54位、ナイジェリア:52位、カメルーン:26位、ブラジル:1位、と栽培環境や生産者に関することも共通点が多いので整理してみます。

■どちらも植物であること

 カカオもコーヒーも植物の種子であり、それを加工することで商品として利用されます。

■どちらも焙煎させること。

 コーヒーは生豆の状態でコーヒー液を抽出することはできません。コーヒー生豆を焙煎させた上で抽出して飲みますが、カカオも同様に焙煎加工を行います。また、どちらも焙煎度合に応じて味が変わるので、好みに応じて焙煎度合をコントロールしています。

主に途上国で生産されています。

 カカオもコーヒーも栽培拡大の背景には、ヨーロッパ諸国による植民地支配によって広まりました。また、栽培条件の関係などから赤道付近の途上国でどちらも生産され、最初は作らされたという背景があるにせよ、現在ではカカオもコーヒーも途上国の経済を支える農産物となっています。

■どちらも飲み物として使用されています。

 ココアはカカオから出来ており、生産過程ではカカオの種子を発酵と焙煎させた後、外側の皮を取り除いて、更に油脂分を取り除いて粉砕することで作られます。コーヒーもミューシレージを発酵除去した後に乾燥と外皮を脱穀し、焙煎を行う事から似たような工程で飲み物になります。

価格決定をめぐる国際金融マーケットが存在します。

 カカオもコーヒーもコモディティ(一般的)品物は商品先物取引の銘柄のひとつになっており、投資家によって相場が形成され、生産と消費の需給バランスの他に、国際情勢や他の投資商品の魅力度との関係で値が上下する背景があります。早い話、生産者が自ら値付けを行える環境にはありません。

 そんな中、カカオもコーヒーも「単価を上げていく」自助努力として、品質や希少性などを高める方法が行われていますが、コーヒーについては品評会によるオークション導入などが進んでいる反面、カカオについては、チョコレートの大量生産のために各地域のカカオをブレンドして作られているため、カカオ生産者や一地域個々の品質について評価をする状況にはなっていません。

■生産者が作っている物の良し悪しが分からない。

 コーヒーの生産国の中には、植民地支配する国によって作らされた歴史から、コーヒーを飲用する習慣の無い国も存在しました。(今でもあるのかもしれません)当然、農産物として生産量を気にすることはあっても、品質や味覚特性を理解していませんでした。カカオについては、そもそもチョコレートも食べたことがない人々が生産しているケースが多いという現状があり、カカオの良し悪しや、カカオとチョコレートの風味の関係性も知らないまま生産に従事しています。

■児童労働が存在します。

 コーヒーの産地セミナーへ行くと必ず児童労働の話題が出てきますが、カカオについては生産国がアフリカの国々に多いこともあって、児童労働はさらに多くなります。

 後半の方にはチョコレートのように甘い話にはなりませんでしたが、恵まれた国に住んでいる人間として、産地のことを理解しながら自分の口に入れてほしいと思うのでした。