3とか4とか

 ギリシャ神話に、エジプトのスフインクスが旅人に問をかけ、答えられないと殺してしまったという有名な質問があります。それは、『朝には4本足、昼には2本足、夜には3本足の生き物は何だ?』というものです。答えは人間で、赤ちゃんの時はハイハイして4本足、次は直立2本足歩行、そして杖を頼りに3本足です。
 これは、人生を3つに区分した表現であり、同様にA・ゲーデンは『第三の人生 ~あなたも老人になる~』(南窓社 昭和59年)で、青少年期、中年期、老年期と区分して老年期の生き方を説いています。仏教では、人生を以下の4つの時期に分ける四住期という思想があり、20歳までを勉学に励む学生期、40歳までを家庭で家族と過ごす家住期、60歳までを林の中で自己を見つめて暮す林住期、それ以後を家を捨て放浪の旅に出るという遊行期なんてものもあり、生き方を年齢とともに変えていくことが共通点です。
 私の場合は、一般な退職後の人生である『第二の人生』を謳歌していることになるのでしょうが、リンダ・グラットンが長寿時代の生き方を説いた『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』で提言した言葉の「人生100年時代」引っ掛けて、日本政府が「人生100年時代構想会議」なるものを開いたりしているので、第三の人生や第四の人生なんて言葉が作られるのかもしれません。いや、「プレミアム・フライデー」なんてしょうもない日を作ったくらいだから、「サード・ライフ」や「フォース・ライフ」になるかもしれません。
 いずれにしても、個人の人生に国からとやかく言われる筋合いはないので気にしませんが、ブームや流行といった大きな潮流は意図的に作られるものですから、『第二の人生』なんて言っていられるのも長くはないのかもしれません。「死」という最終ゴールを常に意識しながら、淡々と与えられた時間を有意義に過ごすだけなのです。
 コーヒーの業界においても、「〇〇ウェーブ」とかいって、ブームや流行などを勝手に括ってしまっています。現在「サード・ウェーブ」などと言われるものが、色々な人から勝手に「フォース・ウェーブ」なるものを、我先にと独自に定義付けする記事が出始めました。これも、ビジネスとして大きな潮流が意図的に作られる現れなんでしょうが、それに乗っかって商売しようという人や、次々と新しい流れを求めるユーザーが存在することにも問題があるのでしょう。
 結局、美味しいか、不味いか、好きか、嫌いか、という単純な事だと思うのですが、その単純な判断をよけいな情報が邪魔をすることになります。3とか4とか言う前に、見るべきものをしっかり見る訓練が必要ということなのでしょう。